院試問題 東大 数理科学研究科 平成28年 専門科目B

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院試問題解答作成基本方針

問題は↓から見られます.
平成30(2018)年度修士課程入学試験について | 東京大学大学院数理科学研究科理学部数学科・理学部数学科


11

定番の一様可積分性の問題です.ただ一様可積分からL^1収束を導かせる問題が多いのに対し,これは逆向きの議論をさせる問題です.
一様可積分性についての基礎事項は朝倉書店の舟木直久『確率論』にまとまっています.

(1)

これはルベーグの収束定理から明らかです.

(2)

f_nの値が大きい部分の積分」をnに関して一様に潰したいわけです.ルベーグの収束定理から「f_nの値が小さい部分の積分」は「fの値の小さい部分での積分」へと収束することは言えそうで, また,仮定より,全体での積分の収束は言えます.
「値の大きい部分での積分」は「全体の積分」と「値の小さい部分での積分」の差で書けるので,
nが十分大きい時には「f_nの値が大きい部分での積分」は「fの値が大きい部分での積分」に近いことが分かりそうです.あとは(1)を使えば示せそうです.

当たり前のことを長々と書きましたが,この問題の難しい所は上の方針を実行するときにある幾つかの細かい部分だと思います.

まず,値が小さい部分での積分の収束を言いましょう.
ここは少し慎重さが必要です.
f_nの値がKに収束するときに,f_nKで切った関数f_n(x)1_{\{f_n \leq K \}}の極限がどうなるかを見なくてはなりません.

    \[f(x)1_{\{ f < K\}} \leq \liminf_{n \to \infty} f_n(x)1_{\{ f_n \leq K\}} \leq \limsup_{n \to \infty} f_n(x)1_{\{ f_n \leq K\}} \leq f(x)1_{\{ f \leq K\}}\]


が成り立つことに注意します.これは\limsup, \liminfが最大,最小の集積値であることを用いて,
部分列をとって議論すれば容易に示せます.

この不等式から\mu\{f = K\} = 0なるK>0に対しては,\lim_{n \to \infty}f_n(x)1_{\{ f_n \leq K\}} = f(x) 1_{\{f \leq K\}} a.e.であることが従います.
また\mu\{f = K\} > 0なるKは高々可算個しかありません.何故なら,\muが有限測度であることから\mu\{f = K\} > \frac{1}{n}なるKは有限個しか無いためです.

K > 0を任意にとります.Kに対し,L(K) > K\mu\{f = L(K) \}= 0なるL(K)をとります.
このとき,

    \[\int_X f_n(x)d\mu(x) = \int_{\{f_n < L(K)\}} f_n(x)d\mu(x) + \int_{\{f_n \geq L(K)\}} f_n(x)d\mu(x)\]


の第1項はルベーグの収束定理からn \to \infty\int_{\{f < L(K)\}} f(x)d\mu(x)に収束します.

よって仮定の,\lim_{n \to \infty }\int_X f_n(x)d\mu(x) = \int_X f(x)d\mu(x)より,
\lim_{n \to \infty} \int_{\{f_n \geq L(K)\}} f_n(x)d\mu(x) = \int_{\{f \geq L(K)\}} f(x)d\mu(x)を得ます.

これで値の大きい部分の積分の収束が分かりました.
最後に値が大きい部分の積分を一様に潰します.

\epsilon > 0を任意にとります.ここで改めてK>0を,\int_{\{f  \geq K\}}f(x) d\mu(x) < \epsilonとなるようにとります.
このとき,ある自然数Nが存在し,任意のn \geq Nなる自然数nに対し,

    \[\int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) \leq \int_{\{f \geq L(K)\}} f(x)d\mu(x) + \epsilon\]


とできます.L(K)の取り方より,\int_{\{f \geq L(K)\}} f(x)d\mu(x) < \epsilonが成り立ちます.

よって,n \geq Nで,(1)より,\int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) \leq 2\epsilonが成り立ちます.
ここで(1)をf_1からf_{N-1}に対して考えると,Kを大きく取り直すことで,n < Nに対しても,
\int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) \leq 2\epsilonが言えます.
つまり,

    \[\sup_{n}\int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) \leq 2\epsilon\]


がわかります.これより,\lim_{K \to \infty} \int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) = 0がわかります.

12

(1)

僕は最初この問題の方針を誤り,かなり迷走しました.
この誤りはある程度普遍的なものだと思いますので,最初にそれを紹介して,その後正答を書くことにします.

僕が最初に考えた方針はf \in {L^{\infty}(\marhbb{R})}^{\ast}を具体的に定義するという方針でした.\varphi \in BC(\mathbb{R})に対し,\varphi (0)を対応させるのですから,原点付近の情報のみを使うことになります.そのような線形汎関数として自然なのは,「原点の近傍上で積分して,それをその近傍の測度で割る」という汎関数を考え,その近傍を潰した極限の汎関数で定義するものでしょう.
最初この方針で示そうとしたのですが収束が示せませんでした.

途中,汎弱位相においてノルム位相に関する閉単位球はコンパクトであるという定理(Alaogluの定理)を使って,収束先がとれる,とも考えましたが,L^{\infty}(\mathbb{R})は可分ではないため,{L^{\infty}(\marhbb{R})}^{\ast}の閉単位球は距離化可能でなく,汎弱コンパクトと汎弱点列コンパクトが一致するか分からないということに気づきました.その後,一致しないことが示せました.

このあたりで,この汎関数をexplicitな形もしくはexplicitな形の極限で書くのは多分無理というような感じがしたので,
超越的な構成法を考えたところHahn-Banachの拡張定理を思い出しました.これを使えばすぐです.

では証明です.

BC(\mathbb{R})L^{\infty}(\mathbb{R})の部分空間とみなせます.
BC(\mathbb{R})上の線形汎関数\psi\psi(u) = u(0) \ (u \in BC(\mathbb{R}))と定めると,
これは明らかにBC(\mathbb{R})上の有界線形汎関数です.あとはHahn-Banachの拡張定理を用いて,L^{\infty}(\mathbb{R})上の有界線形汎関数\varphiに拡張すれば良いです.

(2)

背理法で示します.直観的にはそのようなvがあれば,原点のみに台を持つものになりそうです.
しかし,ルベーグ測度に関して可積分な関数で,そのような性質をもつものは0に限られます.
このイメージを証明に落とし込みます.

任意のu \in BC(\mathbb{R})に対し,f(u)=0となることを示すことによって矛盾を示します.

g_n \in BC(\mathbb{R})0 \leq g \leq 1, g(x) = 0 \ on [-\frac{1}{n},\frac{1}{n}], g(x) = 1 \ on {[-\frac{2}{n},\frac{2}{n}]}^cとなるようにとります.
このとき,u \in BC(\mathbb{R})に対し,ug_n \in BC(\mathbb{R})より,f(ug_n)= 0です.

一方,ルベーグの収束定理定理より,\int u(x)g_n(x)v(x)d\mu(x) \to \int u(x)v(x)d\mu(x) \ (n \to \infty)がわかるので, f(ug_n) \to f(u) \ (n \to \infty)となります.

よって,結局f(u)=0となります.
これで矛盾が言えました.

14

確率論の問題です.単純な独立確率変数の和の話ではないのでマルチンゲール等の便利な道具は使えません.地道にやっていきます.

(1)

具体的な値を求める必要はありません.k十分大でk^p \leq a^k (a >1)であることを使えば有限なことは分かります.

(2)

独立なのでX_jの値ごとに分けてやれば(1)から有限なことが言えます.

(3)

これもただの計算です.

(4)

これは少し面倒です.もしかしたらもっと簡単な回答があるかもしれません.

S_nU_jの相加平均ですが,U_j = Y_{X_j}X_kkが大きくても大きな値をとるとは限らないため,nを増やした時に独立な要素が加わる訳ではありません.
つまり,独立確率変数の相加平均のように極限が定数に退化するようなことは期待できません.

まずは収束先のあたりをつけましょう.\{X_k\}_kは独立同分布であることから,
\{X_k\}_kの値をプロットして度数分布表を作ったとすると,
サンプル数を非常に大きくすれば,その概形(あるスケールで見た時の形)はX_1の分布に近づくことが予想できます.
つまり,\{U_k\}_kのうちY_jに一致するものの割合は\frac{\lambda^k}{k!}\exp(-\lambda)であることが予想されます.

そこでS_{\infty} = \Sigma_{j=0}^{\infty} \frac{\lambda^j}{j!}\exp(-\lambda)Y_jと定めます.
S_{\infty}が概収束,L^2収束するのは独立確率変数の和の理論,若しくはマルチンゲール理論からわかるので,問題なく定義できます.
次に,S_nS_{\infty}L^2収束することを示します.

S_nS_{\infty}への収束は\{U_j\}_jの集まりとしての性質が問題であり,個別のU_jがどのY_kに一致するかはどうでもよいです.
もっと正確に言うと,nを止めるごとにU_0からU_{n-1}までの間にY_jが何度現れているのかに興味があります.
となるとS_nはこの目的にあった形に変形しておくと便利です.次の関数を導入します.

k,n \in \mathbb{N}に対し,N_{k,n} = \# \{ i \leq n-1 | X_i =k \}と定めます.
\#は集合の元の個数を表します.
N_{k,n}j0からn-1まで動くとき,U_jY_kに一致する回数を表します.
明らかにN_{k,n} = \Sigma_{j=0}^{n-1} 1\{X_j = k\}です.
この和は独立同分布の2項分布に従う確率変数の和になっています.

さて,このN_{k,n}を用いると,S_n = \frac{1}{n} \Sigma_{j=0}^{\infty}N_{j,n}Y_jと書けます.
ここでN_{j,n}Y_jが独立であることに注意です.

ここまでくれば後は計算です.E[|S_n - S_{\infty}|^2]を独立性を使って計算していきます.
長いので途中式は結構飛ばしています.

途中で現れている,Z_jP\{Z_j = 1\} = 1- P\{Z_j = 0\} = \frac{\lambda^j}{j!}\exp(-\lambda)を満たす確率変数です.N_{j,n}n個のZ_jと同分布な独立な確率変数の和になっています.
よって,収束が言えました.

(5)

(4)では, E[S_n - S_{\infty}|^2]の計算をしましたが, ここではE[S_n - S_{\infty}|^4]の計算をしていきます. 

少しややこしいですが, いくつか定義をしておきます.

M_{i,n} = N_{i,n} - n \frac{\lambda^i}{i!}\mathrm{e}^{-\lambda}, W_{i,n} = M_{i,n}(Y_i - \lambda), a_{i,n} = E[M_{i,n}^4], b = E[(Y_j - \lambda)^4], c = E[(Y_j - \lambda)^2], d_i = E\left[\left(1\{X_1 = i\} - \frac{\lambda^i}{i!}\mathrm{e}^{-\lambda}\right)^4\right].

このとき以下の計算が成り立ちます. 長いので多少省略気味に書いていますが, 基本的にはシュワルツの不等式と独立性と平均0であることを使っているだけです.

(1)   \begin{align*}E|S_n - S_\infty|^4 &= \frac{1}{n^4}E\left|\sum_{j=0}^{\infty}\left( N_{j,n} - n\frac{\lambda^j}{j!}\mathrm{e}^{-\lambda} \right)(Y_j - \lambda) \right|^4  \\&= \frac{1}{n^4}\sum_{i,j,k,l = 0}^{\infty}E[W_{i,n}W_{j,n}W_{k,n}W_{l,n}]  \\&= \frac{1}{n^4}\sum_{i = 0}^{\infty}E[W_{i,n}^4] + \frac{1}{n^4}\sum_{i,j = 0, i \neq j}^{\infty}E[W_{i,n}^2W_{j,n}^2]  \\&= \frac{b}{n^4}\sum_{i = 0}^{\infty}a_{i,n} + \frac{1}{n^4}\sum_{i,j = 0, i \neq j}^{\infty}E[W_{i,n}^2W_{j,n}^2]  \\&\leq \frac{b}{n^4}\sum_{i = 0}^{\infty}a_{i,n} + \frac{c^2}{n^4}\sum_{i,j = 0, i \neq j}^{\infty}\sqrt{a_{i,n}a_{j,n}}  \\&\leq \frac{b}{n^4}\left( \sum_{i = 0}^{\infty}\sqrt{a_{i,n}}\right)^2. \end{align*}

ここで, 容易にd_i \leq 8 \frac{\lambda^i}{i!}\mathrm{e}^{-\lambda}がわかり, このことから(例えばスターリングの公式を使うことで),

(2)   \begin{align*}\sum_{i = 0}^{\infty}\sqrt{d_i} < \infty. \end{align*}


がわかります.  よって, ある定数C > 0に対し, 次が成り立ちます:

(3)   \begin{align*}|E[S_n^4]^{1/4} - E[S_\infty^4]^{1/4}|^{4} \leq E|S_n - S_\infty|^4 \leq \frac{C}{n^2}. \end{align*}


よってES_n^4 \xrightarrow{n \to \infty}ES_{\infty}^4が示されました.

院試問題 東大 数理科学研究科 平成28年 専門科目B」への3件のフィードバック

  1. ラヴェ

    B11の(2)についてですが、チェビシェフの不等式を使ってμ({×|f≧K})≦M/K(Mはint f_nを抑える正定数)がいえて、これを使ってsup f_n×M/Kで上から評価できてK→infinity で0のいう論法はダメでしょうか。

    返信
  2. paleperlite 投稿作成者

    ラヴェ様

    返信が遅くなってしまい申し訳ございません。
    コメントをいただきありがとうございます。

    この問題の場合には sup f_n = ∞となる場合や{ sup f_n }_n が n→∞ で発散してしまう可能性があるのでその議論はできません.
    可積分性からは関数の有界性は従いません.
    例: 確率空間を開区間 ( 0, 1 ) とし, 測度をルベーグ測度で入れます.
    このとき, f(x) = – log x は可積分ですが, 非有界です.

    返信
  3. 最初の問題ですが、vitality Hahn sacksの定理が使えませんか?
    全ての可測集合上で積分が収束することは、優収束定理を証明する感じで証明(優収束定理は使えませんが)
    μ(E(fn>k))がnに関して一様にkを無限に飛ばした時に0に収束することが示せれば、上の定理などから示せそうな気がします

    返信

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