院試問題 東大 数理科学研究科 平成29年 専門科目B

Pocket
LINEで送る

院試問題解答作成基本方針

問題は↓から見られます.
平成30(2018)年度修士課程入学試験について | 東京大学大学院数理科学研究科理学部数学科・理学部数学科

この年の問題は難しいですね.


9

これは割合簡単な問題です.一様可積分性っぽい雰囲気はありますが特にその方面の知識は要りません.

(1)

q = \frac{p}{p-1}とおくと,1/p +1/q = 1であることに注意しましょう.
これでHolderの不等式から,f_n(x)g(x) \in L^1(\mathbb{R})が分かります.

A_{M,n}上では,|f_n(x)g(x)| \leq M|g(x)|^{\frac{p}{p-1}}が成り立つので,
可積分な優関数としてM|g(x)|^{\frac{p}{p-1}}をとってルベーグの収束定理を使えばOKです.

(2)

(1)からA_{M,n}上での積分が0に収束することは分かっているので,

\limsup_{n \to \infty }\int_X |f_n(x)g(x)|d\mu (x) = \limsup_{n \to \infty }\int_{A_{M,n}^c}|f_n(x)g(x)|d\mu (x)が成り立ちます.この右辺を評価していきます.

A_{M,n}^c上では,|f_n(x)g(x)| \leq \frac{1}{M}|f_n(x)|^pが成り立ちます.
またR := \sup_n \int_X |f_n(x)|^p d\mu(x)とおくと,仮定よりR < \inftyとなります.
よって,\sup_n \int_{A_{M,n}^c} |f_n(x)g(x)| d\mu(x) \leq \frac{1}{M}Rとなるので,

結局,

    \[\limsup_{n \to \infty }\int_X |f_n(x)g(x)|d\mu (x) \leq \frac{1}{M}R\]

がわかり,右辺のMはいくらでも大きくとれるので,これで示せました.

11

これは少し面倒です.
(1)はL^1 - L^{\infty}の双対性を使って具体的に共役作用素を表して,像に入らなさそうな元を考えます.
(2)はルベーグ測度の位相的性質,つまり連続関数による近似を使います.
ちゃんと書くと記述量が結構多くなるので端折り気味に書きます.
またL^1(\mathbb{R})^{\ast},l^1(\mathbb{N})^{\ast}はそれぞれL^{\infty}(\mathbb{R}),l^{\infty}(\mathbb{N})と同一視します.

(1)

定義に従って計算することによって,\varphi \in L^{\infty}(\mathbb{R})に対し,
T^{\ast}(\varphi) = (\int \varphi(x)\chi_n(x) dx)_n \in l^{\infty}(\mathbb{N})がわかります.

k,l \in \mathbb{N}\chi_k = 1_{(-1,0)},\chi_l = 1_{(0,1)}となるようにとります.
このとき,\delta \in l^{\infty}(\mathbb{N})を第k,l成分が1であとの成分はすべて0であるような元と定めます.\deltaT^{\ast}の像に含まれないことを示します.

背理法で示します.T^{\ast}(\varphi) = \deltaであると仮定します.
このとき\deltaの定義から,\int_{\mathbb{R}} \varphi(x)dx = \Sigma_{n=-\infty}^{\infty}\int_{(n,n+1)}\varphi(x)dx = 2が成り立ちます.

しかし,同時に\int_{\mathbb{R}} \varphi(x)dx = \Sigma_{n=-\infty}^{\infty}\int_{(n-1/2,n+1/2)}\varphi(x)dx = 0も成り立つので矛盾します.

よって,背理法より示されました.

(2)

まず,Ker T^{\ast}の元がどのようなものかあたりをつけます.
\varphi \in KerT^{\ast}とすると,任意の(\eta_n)_n \in L^{\infty}(\mathbb{R})に対して,\Sigma_n \eta_n\int_{I_n}\varphi(x)dx = 0より,
任意のn \in \mathbb{N}に対し,\int_{I_n}\varphi(x)dx = 0がわかります.

これより,\varphi1を周期に持つような感じの関数であることが分かります.
ここから確かに\varphi(\sigma f) = \varphi(f)が成り立ちそうな気がしてきます.
ただ当然のことながらL^{\infty}(\mathbb{R})の元の各点の値というのは意味を持ちませんから,
積分を通じてこの性質を使っていくことになります.

となれば,f \in \L^1(\mathbb{R})をとったときに,それを近似するような幅1/nの階段状の関数が取れれば良さそうです.
ここで幅1/nの階段状の関数とは,任意のk \in \mathbb{Z}に対し,
(k/n,(k+1)/n]上で定数となるような関数を考えています.

f \in \L^1(\mathbb{R})に対して直接そのような関数での近似を考えるのは難しいので,
まず,fを台がコンパクトな連続関数gL^1の意味で近似します.
これが出来るのは有名な事実ですし,証明も簡単なのでここでは認めて使います.

そして,そのgn \in \mathbb{N}に対し,(k/n,(k+1)/n] \ (k \in \mathbb{Z})上でn\int_{(k/n,(k+1)/n)}g(x)dxとなるような幅1/nの階段状の関数g_nを考えれば,gの一様連続性からg_ngL^1収束します.

よって結局,階段状の関数がL^1(\mathbb{R})で稠密であることが分かるので,
任意の階段状の関数gに対し,\varphi(\sigma g) = \varphi(g)を示せばよいことが分かります.
あとは計算です.

まずn \in \mathbb{N}, k \in \mathbb{Z}に対して,b_{n,k} = \int_{(k/n,(k+1)/n]} \varphi(x)dxと定めると,\int_{I_n}\varphi(x)dx = 0 \ (n \in \mathbb{N})より,b_{n,k} = b_{n,k + n}が成り立つことに注意します.

このときn次の階段状の関数gは,ある数列\{a_n\}_nを用いてg(x)= \Sigma_n a_n 1_{(k/n,(k+1)/n]}と書けます.
よって,\varphi(\sigma g) = \Sigma_k a_k b_{n,k+n} = \Sigma_k a_k b_{n,k} = \varphi(g)となるので示されました.

13

以前,(3)はチェルノフ型の不等式でも解けると書いていたのですが,
計算に誤りがあり,出来ていませんでした.4次モーメントの計算は問題なくできます.

(1)

これは簡単です.一応証明を書いておきます.

P[\lim_{n \to \infty} M_n < \infty] = \lim_{m \to \infty}P[ \lim_{n \to \infty}M_n < m]より,
P[ \lim_{n \to \infty}M_n < m] = 0を示せば十分です.

これは,
P[ \lim_{n \to \infty}M_n < m] = \lim_{n \to \infty} P[M_n < m] = \lim_{n \to \infty} P[N_1 < m]^n = 0
よりわかります.

(2)

概収束は(1)と大数の強法則を用いればすぐに分かります.
L^p収束は任意のm \in \mathbb{N}に対して\{S_n\}L^m有界であることを示せば,
一様可積分性の議論より従います.
\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty})の極限は中心極限定理からわかります.
XNは独立なので逐次積分に置き換えて中心極限定理を使います.

まず,大数の強法則より,\frac{\sum_{j = 1}^{n} X_j}{n} \to \theta (n \to \infty)\ a.s.がわかります,
(1)より,M_n \to \infty (n \to \infty) \ a.s.がわかるので,
確率1で,(S_n)_nは,\left( \frac{\sum_{j = 1}^{n} X_j}{n} \right)_nの部分列です.
よって,S_n \to \theta (n \to \infty) a.s.が分かります.
これで概収束は言えました.

次は任意のm \in \mathbb{N}に対して\{S_n\}L^m有界であることを示します.
これは簡単な計算で分かりますが,少し長いので簡略に書きます.

まず独立性から,E|S_n|^m = \sum_{k =1}^{\infty} \frac{1}{k^m}E[(\sum_{j=1}^{k} X_j)^m ]P[M_n = k]が分かります.E[(\sum_{j=1}^{k} X_j)^m ]を評価していきます.

Xの分布を使って,E[(\sum_{j=1}^{k} X_j)^m ] = \int_{(0,\infty)^k} (x_1 + \cdots +x_k)^m \theta^{-k}\exp(-\theta^{-1}(x_1 + \cdots +x_k))dx_1 \cdots dx_kがわかります.
この積分でy_1 = x_1 + \cdots +x_k , y_i = x_i (i = 2, \cdots ,k)と変数変換して計算すると,結局,
E[(\sum_{j=1}^{k} X_j)^m ] = \frac{(m+k-1)!}{(k-1)!} \theta^mが分かります.

よって,a_k = \frac{1}{k^m}\frac{(m+k-1)!}{(k-1)!}\theta^mと定めると,
E|S_n|^m = \sum_k a_k P[M_n = k]が分かります.
あとは(a_k)_kが有界であることが言えれば,(E|S_n|^m)_nnに寄らない定数で抑えられることが分かりますが,(a_k)_kの有界性はスターリングの公式より直ちにわかります.
よって,L^p収束が言えました.

最後に,\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty})n \to \inftyでの極限分布を求めます.
f : \mathbb{R} \to \mathbb{R}を有界連続関数とします.
E[f(\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty}))]n \to \inftyでの極限を求めます.

まず明らかに,\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty}) = \frac{\sum_{j=1}^{M_n} (X_j -\theta)}{\sqrt{M_n}}です.

また,中心極限定理より,E[f(\frac{\sum_{j=1}^{n} (X_j -\theta)}{\sqrt{n}})] \to E[f(\theta Z)] (n \to \infty)が分かります.
ここでZは平均0,分散1の正規分布に従う確率変数です.

(N_k)_k(X_k)_kの独立性から,
E[f(\frac{\sum_{j=1}^{M_n} (X_j -\theta)}{\sqrt{M_n}})] = E[E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n }]です.
E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n }f(\frac{\sum_{j=1}^{M_n} (X_j -\theta)}{\sqrt{M_n}})M_nを定数と見なして積分したものです.

ここで(1)より,M_n \to \infty(n \to \infty) \ a.s.が分かるので,
E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n } \to E[f(\theta Z)] (n \to \infty) a.s.が言えます.

また明らかに,|E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n }| \leq ||f||より,
ルベーグの収束定理から,E[E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n }] \to E[E[f(\theta Z)]] = E[f(\theta X)] (n \to \infty)がわかります.

よって,\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty})n \to \infty\theta Zに分布収束します.

(3)

これは大変でした.まず,F_nを微分して極値を求められるので,T_nはexplicitに書けます.
そしてT_nの収束先の予想は立ちます.しかし問題となるのは実際に収束するのを示すことです.
概収束をどう示すかに僕は大いに悩みました.独立な要素が加わるわけでは無いので大数の強法則は使えませんし,マルチンゲールでもないので概収束定理も使えません.

ここではBorel-Cantelliの補題を使って概収束を示します.
Borel-Cantelliの補題を使うには確率の無限和を評価しなくてはなりませんが,ここはオーソドックスにモーメント型の評価で行けます.4次モーメントを評価します.

概収束が言えれば,あとは任意のp \geq 1に対して\{T_n\}L^p有界であることを示せば,
一様可積分性の議論より,L^p収束が分かります.

ただこれら全部の議論をするにはかなりの計算量が必要です.
院試の時間内に完全に解くのは個人的には現実的では無いと思います.
もちろんもっと楽な解法があるなら話は別ですが.

まずは,F_nが最大値をとるtの値を求めます.

    \[F_n(t) = \frac{1}{t^{N_1 + \cdots + N_n}}\exp(-\frac{(X_1 + \cdots + X_{N_1}) + \cdots + (X_1 + \cdots + X_{N_n})}{t})\]

より,\frac{1}{t^k}\exp(-\frac{a}{t}) (k \in \mathbb{N},a \geq 0)という形の関数の最大値とるtの値を求めればよいことになります.これは微分すればわかり,t=a/nのときに最大値を取ります.

よって,T_n = \frac{\sum_{k=1}^{n}\sum_{j=1}^{N_k}X_j}{U_n}となります,
ここでU_n = \sum_{k=1}^{n}N_kと定めました.

T_nの形からnを増やした時に独立な要素が加わる訳では無いことが分かるため,
極限は退化したものにはならないことが分かります.

T_nの分子にどれくらいの頻度でX_jが現れるのかを見たいので,
それを見るための確率変数を導入します.n,j \in \mathbb{N}に対し,
\varphi_{n,j} = \#\{ k \in \mathbb{N} | k \leq n ,N_k \geq j \} = \sum_{k=1}^{n}1\{N_k \geq j\}
と定めます.こうすると
T_n = \frac{\sum_{j=1}^{\infty} \varphi_{n,j}X_j}{U_n}と表せます.

大数の強法則より,

    \[\frac{\varphi_{n,j}}{U_n} = \frac{ \varphi_{n,j}}{n} \frac{n}{U_n} \to \frac{1}{2^{j-1}} \frac{1}{2} = \frac{1}{2^j} (n \to \infty) \ a.s.\]

が分かるので,T_nの分子に現れるX_jの個数の割合は全体の1/2^jに近づいていくことが予想されます.つまり,T = \sum_{j=1}^{\infty} \frac{1}{2^j}X_jに収束することが予想されます.

実際に概収束することを示していきますが,計算の過程でU_nが扱いにくいのと,X_jをセンタリングして扱いたいので,問題を少しreductionしておきます.

    \[T_n \to T \ a.s. \Leftrightarrow \frac{\sum_{j=1}^{\infty} \varphi_{n,j}(X_j - \theta)}{U_n} \to T -\theta \ a.s.\]

    \[\Leftrightarrow \frac{\sum_{j=1}^{\infty} \varphi_{n,j}(X_j - \theta)}{2n} \to T -\theta \ a.s.  \Leftrightarrow \sum_{j=1}^{\infty}(\frac{\varphi_{n,j}}{2n} - \frac{1}{2^j})(X_j - \theta) \to 0 \ a.s.\]

が成り立つので,一番右を示します.2つ目の同値では大数の強法則を用いています.
V_n = \sum_{j=1}^{\infty}(\frac{\varphi_{n,j}}{2n} - \frac{1}{2^j})(X_j - \theta)と定めます.

Borel-Cantelliの補題より,任意の\epsilon > 0に対し,
\sum_{n=1}^{\infty} P[|V_n| > \epsilon] < \inftyが言えれば,V_n \to 0 \ a.s. (n\to \infty)が分かります.

\epsilon > 0を固定します.
nによらない定数C >0に対し,P[|V_n| > \epsilon] \leq C/n^2と出来ることが言えれば十分です.
これを示すためにチェビシェフの不等式を用いて4次モーメントを評価します.
何故2次ではなく4次かというと2次ではP[|V_n| > \epsilon] \leq C/nまでしか出ないからです.
計算が結構面倒なので端折り気味に書きます.
V_nは無限和で扱いにくいのでまずは有限和の話に落とし込みます.

ここでV_{n,k} = \sum_{j=1}^{k}(\frac{\varphi_{n,j}}{2n} - \frac{1}{2^j})(X_j - \theta)です.
P[|V_{n,k}| > \epsilon]をチェビシェフの不等式とヘルダーの不等式を用いて評価していきます.

ここでm_{n,i} = E\left[\left(\frac{\varphi_{n,i}}{2n} - \frac{1}{2^i}\right)^4 \right]です.
よって次はm_{n,i}を評価していきます.

となりますが,1\{N_p \geq i\} - \frac{1}{2^{i-1}}は2点にのみ値をとる関数なので簡単に期待値が計算でき,
あるn,iによらない定数C'' > 0がとれて,

    \[E\left[\left(1\{N_p \geq i\} - \frac{1}{2^{i-1}}\right)^4\right],E\left[\left(1\{N_p \geq i\} - \frac{1}{2^{i-1}}\right)^2\right] \leq C'' \frac{1}{2^i}\]

とできます.

よってこれより,あるn,iによらない定数C >0がとれて,\sum_{i=1}^{\infty} m_{n,i} \leq C\frac{1}{n^2}となることが分かり,
P[|V_n,k| > \epsilon] \leq C/\epsilon^4 n^2が言えるので,概収束が言えました.

最後に任意のm \in \mathbb{N}に対し,T_nL^m有界であることを示します.
(X_n)(N_n)の独立性から,


がわかります.E\left[\left( \sum_{j=1}^{\infty} p_{n,j} X_j \right)^m\right]を評価していきます.
\varphi_{n,j}の定義から,確率1で,有限個のjを除いてp_{n,j} = 0が分かります.

よって,(a_1X_1 + \cdots +a_kX_k)^m , k,a_1, \cdots ,a_k \mathbb{N}という形の確率変数の期待値を評価すればよいことになります.
E[X^l] = l!\theta^lであることに注意すると,単純な計算から,

がわかります.
よって,E\left[\left( \sum_{j=1}^{\infty} p_{n,j} X_j \right)^m\right] \leq m! \theta^m (\sum_{j=1}^{\infty} p_{n,j})^mがわかるので,
\sum_{j=1}^{\infty} \varphi_{n,j} = U_nから,E|T_n|^m \leq m!\theta^mを得ます.
よって,(T_n)_nL^m有界性がわかり,これですべて示せました.

院試問題 東大 数理科学研究科 平成29年 専門科目B」への2件のフィードバック

  1. paleperlite 投稿作成者

    名無し様

    返信が遅くなり大変申し訳ございません。
    リンク落ちしている部分とは問題13の(3)の証明内の「(X_n)と(N_n)の独立性から,」に続く部分の式変形のことでしょうか?
    ひとまずその部分を修正しておきました。ご指摘ありがとうございます。

    もし別の点についてご指摘いただいているのであれば、大変恐縮ではございますが、再度ご連絡いただければ幸いです。

    返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください