院試問題 九大 数理学府 平成30年 専門科目

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院試問題解答作成基本方針

問題は↓から見られます.
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7

複素関数論の基本的な問題です.

(1)

正則関数なのでaの近傍でべき級数展開出来るので,仮定より直ちにわかります.

(2)

一致の定理を示せという問題です.色々示し方はあると思いますがここでは(1)を使ってみます.

背理法で示します.aの任意の近傍で恒等的に0でないと仮定します.
すると,faのある近傍で正則なのである近傍U上べき級数で表せます.
このとき背理法の仮定よりあるn \in \mathbb{N}が存在してf^{(n)}(a) \neq 0となります.
よって(1)より,g(a) \neq 0なるU上の正則函数を用いて,f(z) = (z-a)^n g(z) , z \in Uと表せます.

f(z_j) = 0より,g(z_j) = 0であり,\{z_j\}_jaに収束するので連続性よりg(a) = 0です.
よって,矛盾より,示せました.

(3)

連結性を使います.以下では位相はすべてDの相対位相を考えます.

A = \{ z \in D | f(z) = 0 \}と定めます. fは(2)の条件を満たすのでAは内点を持ちます.
つまりA^iAの内部とすると,A^i \neq \emptysetです.
(2)からA^iの境界はA^iに含まれることがわかります.よって,A^iは開かつ閉であり,
空ではないので,Dの連結性からA=Dが分かります.

(4)

x + iy \in \mathbb{C}, x,y \in \mathbb{R}に対し,\sin (x+iy) = 0の実部,虚部を整理すると,
x = 0,y = 2\pi n , n \in \mathbb{Z}が容易にわかります.

よって,任意のx \in \mathbb{R}に対し,\sin(h(x)) = 0なら,h(x) \in \{2\pi n i | n \in \mathbb{Z}\}となりますが,hの連続性から,あるn \in \mathbb{Z}が存在して,
h(x) = 2\pi ni , x \in \mathbb{R}となります.
g(z) = h(z) - 2\pi niと定めます.
(2)(3)でD = \mathbb{C}とすれば,g(z)= 0 , z \in \mathbb{C}がわかります.

8

微分方程式の問題です.誘導に従っていけば解けます.

(1)

z(t) = y(\exp(t))と定め,zについての微分方程式に変換します.
連鎖律を使うだけです.

    \[z'' - 4z' + 4z =t\exp(2t)\]

となります.

(2)

Dを微分作用素とするとき,D(z \exp(at)) = \exp(at)(D + a)z , a \in \mathbb{R}であることを用いて計算していきます.

(1)より解くべき微分方程式は(D-2)^2z = t \exp(2t)です.
上に記した公式からD^2(z\exp(-2t))=tとなるので,
z\exp(-2t) = \frac{1}{6}t^3 + C_1t + C_2より,一般解は,
z = \exp(2t)(\frac{1}{6}t^3 + C_1t + C_2)です.

(3)

(2)の定数C_1,C_2を決定するだけです.

9

一様可積分性についての問題です.(4)が難しいです.

(1)

これは成り立ちます.基本的な問題です.

\epsilon > 0を任意にとります.このときgは可積分よりルベーグの収束定理から,
あるM > 0がとれて,\int_{\{g > M\}}g d\mu < \epsilonが分かります.

|f_n| \leq gより,\{|f_n| > M\} \subset \{g >M\}がわかるので,
\int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu \leq \int_{\{g >M\}}g d\mu < \epsilonです.
nは任意なので,\sup_n \int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu \leq \epsilonより,
与えられた命題が成り立つことが分かります.

(2)

これも成り立ちます.これも基本的な問題です.

\{f_n\}_nは一様可積分より,あるM >0が存在して\sup_n \int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu <1
がわかります.
よって,
\int |f_n|d\mu = \int_{\{|f_n| >M\}} |f_n|d\mu + \int_{\{|f_n| \leq M\}} |f_n|d\mu <1 + M\mu(X)が成り立ち,
この評価はnによらないので与えられた命題が成り立つことが分かりました.

(3)

これは成り立ちません.これも簡単です.

反例を作ります.有限測度空間([0,1],\mathcal{B},\mu)を考えます.ここで\mathcal{B}[0,1]の開集合から生成される\sigma加法族,\muをルベーグ測度とします.

f_n(x) = n1\{0 \leq x \leq 1/n\}と定めます.
このとき明らかに\sup_n \int |f_n|d\mu = 1であり,
また任意のM > 0に対し,n>Mなるn \in \mathbb{N}を考えれば,
\sup_n \int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu = 1も分かります.
よって与えられた命題が成り立たないことがわかりました.

(4)

これは成り立ちます.これだけやたらと大変です.もっと簡単な方法があるのかもしれません.
解答は中々に量があるので簡略に書きます.

以下では\mu (f) = \int f d\muというような表記法を用います.
\varphi(t) = |t|\log \log (2+|t|), t \in \mathbb{R}と定めます.
a,b \in \mathbb{R}に対し,\max\{a,b\} = a\vee bと表します.

最初はモーメント型の不等式を使うときの典型的な変形をして計算していきます.
その前に\varphiについて少し調べておきます.
\varphiの微分を計算することで,tがある程度大きければ\varphi(t)は狭義単調増大になることが分かります.
また,\lim_{t \to \infty}\varphi(t) = \inftyも容易にわかります.
よって,あるC>0がとれて,t >Cでは\varphi(t)は正で狭義単調増大で次が成り立つようにできます: \sup_{s \in [0,C]}\varphi(s) \leq \inf_{s \in [C,\infty]\varphi(t)}. 少しややこしいですが, これはMが十分大きければ, \mu \{M < g\} = \mu \{\varphi(M) < \varphi(g)\}が成り立つことを示しています.
M>Cを任意にとります.任意の非負可積分関数gに対し,次のように評価します.

上の計算の1~3行目のような,「関数fの測度\muでの積分」を「f\muに関する分布関数のルベーグ積分」に置き換えるという操作はよく使われるものです.

上の式変形の最右辺の第2項を更に評価します.
ここで,\varphi(t) = uという変数変換をします.
t >Cでは, \varphi(t)の逆関数\psiが取れることに注意します.

以上を踏まえて以下の計算をしていきます.以下ではMCより大きいとします.

よって,gとして|f_n|を考えれば,
\mu(|f_n| 1_{\{|f_n| >M\}}) \leq \frac{M}{\varphi(M)} \mu(\varphi(|f_n|))  + \sup_{x \in [\varphi(M),\infty)}|\psi'(x)|\mu(\varphi(|f_n|))

仮定より,\sup_{n} \mu (\varphi(|f_n|)) \leq Aなる定数A>0がとれるので,
\sup_n \mu(|f_n| 1_{\{|f_n| >M\}}) \leq \frac{M}{\varphi(M)} A  + \sup_{x \in [\varphi(M),\infty)}|\psi'(x)|A
がわかります.
\varphiの定義から明らかに,\frac{M}{\varphi(M)} \to 0 (m \to \infty)が成り立ち,
逆関数の微分は元の関数の微分の逆数であることから\psi'(x) = 1/\varphi'(x)で,
簡単な計算から\varphi'(x) \to \infty (x \to \infty)がわかるので,
\psi'(x) \to 0 (x \to \infty)となり,与えられた命題が成り立つことが分かりました.

(5)

これは成り立ちます.特に難しい点はありません.

\epsilon > 0を任意にとります.
\{f_n\}_nは一様可積分より,あるM >1が存在して
\sup_n \int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu <\epsilonとできます.

よって

    \[\int_{\{|f_n| >1 \}} |f_n|d\mu = \int_{\{|f_n| >M \}} |f_n|d\mu + \int_{\{1< |f_n| \leq M \}} |f_n|d\mu\]

    \[\leq \epsilon + M \mu \{|f_n| >1\}$がわかります.\]

仮定より,\lim_{n \to \infty} \mu\{|f_n| >1\} = 0より,
\limsup_{n \to \infty} \int_{\{|f_n| >1 \}} |f_n|d\mu \leq \epsilon.
\epsilonは任意に小さくとれるのでこれで与えられた命題が成り立つことが分かりました.

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(1)

期待値を計算するだけです.

(2)

分布関数の微分が密度関数になるので,分布関数を計算します.
x \in [0,\theta]に対し,
P[Z_2 \leq x] = P[X_1 \leq x , X_2 \leq x] = P[X_1 \leq x]^2 = (x/\theta)^2
となるので,密度関数をgとするとg(x) = (2x/\theta^2)1\{0 \leq x \leq \theta\}.

(3)

(2)と同様にすれば,密度関数hh(x) = (nx^{n-1}/\theta^n)1\{0 \leq x \leq \theta\}となることが分かります.

(4)

期待値を計算するだけです.

11

関数解析っぽい問題です.有限次元なので単位球のコンパクト性が使えます.

(1)

計算するだけです.有限次元なのでノルムから誘導される位相はどれも同値です.
ここではsupノルムから定まる位相を考えることにします.

x \in \mathbb{R}^n,||x||_{\infty} = 1とします.y = Axと定めると,
y_i = \sum_{\substack{j=1 \\ j \neq i}}^{n} (-a_{ij})x_jです.
よって,|y_i| \leq ||x||_{\infty}\sum_{\substack{j=1 \\ j \neq i}}^{n} |a_{ij}| <||x||_{\infty} = 1がわかります.
2つめの不等号では仮定を用いています.

これより,||y||_{\infty} < 1がわかります.
\mathbb{R}^nの単位球はコンパクトで,
関数x \mapsto ||x||_{\infty}は連続なので単位球上最大値を持ちますが,
上の計算から最大値は1より真に小さいことが分かります.

(2)

B = A -Eに注意します.Eは単位行列です.

    \[x^{(k+1)} -x^{\ast} = Bx^{(k)} + b - x^{\ast} = Bx^{(k)} + Ax^{\ast} - x^{\ast}\]

    \[= Bx^{(k)} + (A-E)x^{\ast} = B(x^{(k)} -x^{\ast})\]

からわかります.

(2)

r = ||B||_{\infty}と定めると,(1)よりr <1です.
よって,||x^{(k)} - x^{\ast}|| \leq r^{k-1} ||x^{(1)}-x^{\ast}||_{\infty} \to 0 (k \to \infty)よりわかります.

院試問題 九大 数理学府 平成30年 専門科目」への1件のフィードバック

  1. たけお

    初めまして. 私は現在院試の勉強をしているものです. そのため, こちらの解答参考にさせていただいております. ありがとうございます.
    そこで, もしお時間があれば九大数理学府の他の年の問題も解いていただきたいです. よろしくお願いいたします.

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