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院試問題 九大 数理学府 平成30年 専門科目

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院試問題解答作成基本方針

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7

複素関数論の基本的な問題です.

(1)

正則関数なのでaの近傍でべき級数展開出来るので,仮定より直ちにわかります.

(2)

一致の定理を示せという問題です.色々示し方はあると思いますがここでは(1)を使ってみます.

背理法で示します.aの任意の近傍で恒等的に0でないと仮定します.
すると,faのある近傍で正則なのである近傍U上べき級数で表せます.
このとき背理法の仮定よりあるn \in \mathbb{N}が存在してf^{(n)}(a) \neq 0となります.
よって(1)より,g(a) \neq 0なるU上の正則函数を用いて,f(z) = (z-a)^n g(z) , z \in Uと表せます.

f(z_j) = 0より,g(z_j) = 0であり,\{z_j\}_jaに収束するので連続性よりg(a) = 0です.
よって,矛盾より,示せました.

(3)

連結性を使います.以下では位相はすべてDの相対位相を考えます.

A = \{ z \in D | f(z) = 0 \}と定めます. fは(2)の条件を満たすのでAは内点を持ちます.
つまりA^iAの内部とすると,A^i \neq \emptysetです.
(2)からA^iの境界はA^iに含まれることがわかります.よって,A^iは開かつ閉であり,
空ではないので,Dの連結性からA=Dが分かります.

(4)

x + iy \in \mathbb{C}, x,y \in \mathbb{R}に対し,\sin (x+iy) = 0の実部,虚部を整理すると,
x = 0,y = 2\pi n , n \in \mathbb{Z}が容易にわかります.

よって,任意のx \in \mathbb{R}に対し,\sin(h(x)) = 0なら,h(x) \in \{2\pi n i | n \in \mathbb{Z}\}となりますが,hの連続性から,あるn \in \mathbb{Z}が存在して,
h(x) = 2\pi ni , x \in \mathbb{R}となります.
g(z) = h(z) - 2\pi niと定めます.
(2)(3)でD = \mathbb{C}とすれば,g(z)= 0 , z \in \mathbb{C}がわかります.

8

微分方程式の問題です.誘導に従っていけば解けます.

(1)

z(t) = y(\exp(t))と定め,zについての微分方程式に変換します.
連鎖律を使うだけです.

    \[z'' - 4z' + 4z =t\exp(2t)\]

となります.

(2)

Dを微分作用素とするとき,D(z \exp(at)) = \exp(at)(D + a)z , a \in \mathbb{R}であることを用いて計算していきます.

(1)より解くべき微分方程式は(D-2)^2z = t \exp(2t)です.
上に記した公式からD^2(z\exp(-2t))=tとなるので,
z\exp(-2t) = \frac{1}{6}t^3 + C_1t + C_2より,一般解は,
z = \exp(2t)(\frac{1}{6}t^3 + C_1t + C_2)です.

(3)

(2)の定数C_1,C_2を決定するだけです.

9

一様可積分性についての問題です.(4)が難しいです.

(1)

これは成り立ちます.基本的な問題です.

\epsilon > 0を任意にとります.このときgは可積分よりルベーグの収束定理から,
あるM > 0がとれて,\int_{\{g > M\}}g d\mu < \epsilonが分かります.

|f_n| \leq gより,\{|f_n| > M\} \subset \{g >M\}がわかるので,
\int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu \leq \int_{\{g >M\}}g d\mu < \epsilonです.
nは任意なので,\sup_n \int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu \leq \epsilonより,
与えられた命題が成り立つことが分かります.

(2)

これも成り立ちます.これも基本的な問題です.

\{f_n\}_nは一様可積分より,あるM >0が存在して\sup_n \int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu <1
がわかります.
よって,
\int |f_n|d\mu = \int_{\{|f_n| >M\}} |f_n|d\mu + \int_{\{|f_n| \leq M\}} |f_n|d\mu <1 + M\mu(X)が成り立ち,
この評価はnによらないので与えられた命題が成り立つことが分かりました.

(3)

これは成り立ちません.これも簡単です.

反例を作ります.有限測度空間([0,1],\mathcal{B},\mu)を考えます.ここで\mathcal{B}[0,1]の開集合から生成される\sigma加法族,\muをルベーグ測度とします.

f_n(x) = n1\{0 \leq x \leq 1/n\}と定めます.
このとき明らかに\sup_n \int |f_n|d\mu = 1であり,
また任意のM > 0に対し,n>Mなるn \in \mathbb{N}を考えれば,
\sup_n \int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu = 1も分かります.
よって与えられた命題が成り立たないことがわかりました.

(4)

これは成り立ちます.これだけやたらと大変です.もっと簡単な方法があるのかもしれません.
解答は中々に量があるので簡略に書きます.

以下では\mu (f) = \int f d\muというような表記法を用います.
\varphi(t) = |t|\log \log (2+|t|), t \in \mathbb{R}と定めます.
a,b \in \mathbb{R}に対し,\max\{a,b\} = a\vee bと表します.

最初はモーメント型の不等式を使うときの典型的な変形をして計算していきます.
その前に\varphiについて少し調べておきます.
\varphiの微分を計算することで,tがある程度大きければ\varphi(t)は狭義単調増大になることが分かります.
また,\lim_{t \to \infty}\varphi(t) = \inftyも容易にわかります.
よって,あるC>0がとれて,t >Cでは\varphi(t)は正で狭義単調増大で次が成り立つようにできます: \sup_{s \in [0,C]}\varphi(s) \leq \inf_{s \in [C,\infty]\varphi(t)}. 少しややこしいですが, これはMが十分大きければ, \mu \{M < g\} = \mu \{\varphi(M) < \varphi(g)\}が成り立つことを示しています.
M>Cを任意にとります.任意の非負可積分関数gに対し,次のように評価します.

上の計算の1~3行目のような,「関数fの測度\muでの積分」を「f\muに関する分布関数のルベーグ積分」に置き換えるという操作はよく使われるものです.

上の式変形の最右辺の第2項を更に評価します.
ここで,\varphi(t) = uという変数変換をします.
t >Cでは, \varphi(t)の逆関数\psiが取れることに注意します.

以上を踏まえて以下の計算をしていきます.以下ではMCより大きいとします.

よって,gとして|f_n|を考えれば,
\mu(|f_n| 1_{\{|f_n| >M\}}) \leq \frac{M}{\varphi(M)} \mu(\varphi(|f_n|))  + \sup_{x \in [\varphi(M),\infty)}|\psi'(x)|\mu(\varphi(|f_n|))

仮定より,\sup_{n} \mu (\varphi(|f_n|)) \leq Aなる定数A>0がとれるので,
\sup_n \mu(|f_n| 1_{\{|f_n| >M\}}) \leq \frac{M}{\varphi(M)} A  + \sup_{x \in [\varphi(M),\infty)}|\psi'(x)|A
がわかります.
\varphiの定義から明らかに,\frac{M}{\varphi(M)} \to 0 (m \to \infty)が成り立ち,
逆関数の微分は元の関数の微分の逆数であることから\psi'(x) = 1/\varphi'(x)で,
簡単な計算から\varphi'(x) \to \infty (x \to \infty)がわかるので,
\psi'(x) \to 0 (x \to \infty)となり,与えられた命題が成り立つことが分かりました.

(5)

これは成り立ちます.特に難しい点はありません.

\epsilon > 0を任意にとります.
\{f_n\}_nは一様可積分より,あるM >1が存在して
\sup_n \int_{\{|f_n| >M\}}|f_n|d\mu <\epsilonとできます.

よって

    \[\int_{\{|f_n| >1 \}} |f_n|d\mu = \int_{\{|f_n| >M \}} |f_n|d\mu + \int_{\{1< |f_n| \leq M \}} |f_n|d\mu\]

    \[\leq \epsilon + M \mu \{|f_n| >1\}$がわかります.\]

仮定より,\lim_{n \to \infty} \mu\{|f_n| >1\} = 0より,
\limsup_{n \to \infty} \int_{\{|f_n| >1 \}} |f_n|d\mu \leq \epsilon.
\epsilonは任意に小さくとれるのでこれで与えられた命題が成り立つことが分かりました.

10

(1)

期待値を計算するだけです.

(2)

分布関数の微分が密度関数になるので,分布関数を計算します.
x \in [0,\theta]に対し,
P[Z_2 \leq x] = P[X_1 \leq x , X_2 \leq x] = P[X_1 \leq x]^2 = (x/\theta)^2
となるので,密度関数をgとするとg(x) = (2x/\theta^2)1\{0 \leq x \leq \theta\}.

(3)

(2)と同様にすれば,密度関数hh(x) = (nx^{n-1}/\theta^n)1\{0 \leq x \leq \theta\}となることが分かります.

(4)

期待値を計算するだけです.

11

関数解析っぽい問題です.有限次元なので単位球のコンパクト性が使えます.

(1)

計算するだけです.有限次元なのでノルムから誘導される位相はどれも同値です.
ここではsupノルムから定まる位相を考えることにします.

x \in \mathbb{R}^n,||x||_{\infty} = 1とします.y = Axと定めると,
y_i = \sum_{\substack{j=1 \\ j \neq i}}^{n} (-a_{ij})x_jです.
よって,|y_i| \leq ||x||_{\infty}\sum_{\substack{j=1 \\ j \neq i}}^{n} |a_{ij}| <||x||_{\infty} = 1がわかります.
2つめの不等号では仮定を用いています.

これより,||y||_{\infty} < 1がわかります.
\mathbb{R}^nの単位球はコンパクトで,
関数x \mapsto ||x||_{\infty}は連続なので単位球上最大値を持ちますが,
上の計算から最大値は1より真に小さいことが分かります.

(2)

B = A -Eに注意します.Eは単位行列です.

    \[x^{(k+1)} -x^{\ast} = Bx^{(k)} + b - x^{\ast} = Bx^{(k)} + Ax^{\ast} - x^{\ast}\]

    \[= Bx^{(k)} + (A-E)x^{\ast} = B(x^{(k)} -x^{\ast})\]

からわかります.

(2)

r = ||B||_{\infty}と定めると,(1)よりr <1です.
よって,||x^{(k)} - x^{\ast}|| \leq r^{k-1} ||x^{(1)}-x^{\ast}||_{\infty} \to 0 (k \to \infty)よりわかります.

院試問題 東大 数理科学研究科 平成29年 専門科目B

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院試問題解答作成基本方針

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平成30(2018)年度修士課程入学試験について | 東京大学大学院数理科学研究科理学部数学科・理学部数学科

この年の問題は難しいですね.


9

これは割合簡単な問題です.一様可積分性っぽい雰囲気はありますが特にその方面の知識は要りません.

(1)

q = \frac{p}{p-1}とおくと,1/p +1/q = 1であることに注意しましょう.
これでHolderの不等式から,f_n(x)g(x) \in L^1(\mathbb{R})が分かります.

A_{M,n}上では,|f_n(x)g(x)| \leq M|g(x)|^{\frac{p}{p-1}}が成り立つので,
可積分な優関数としてM|g(x)|^{\frac{p}{p-1}}をとってルベーグの収束定理を使えばOKです.

(2)

(1)からA_{M,n}上での積分が0に収束することは分かっているので,

\limsup_{n \to \infty }\int_X |f_n(x)g(x)|d\mu (x) = \limsup_{n \to \infty }\int_{A_{M,n}^c}|f_n(x)g(x)|d\mu (x)が成り立ちます.この右辺を評価していきます.

A_{M,n}^c上では,|f_n(x)g(x)| \leq \frac{1}{M}|f_n(x)|^pが成り立ちます.
またR := \sup_n \int_X |f_n(x)|^p d\mu(x)とおくと,仮定よりR < \inftyとなります.
よって,\sup_n \int_{A_{M,n}^c} |f_n(x)g(x)| d\mu(x) \leq \frac{1}{M}Rとなるので,

結局,

    \[\limsup_{n \to \infty }\int_X |f_n(x)g(x)|d\mu (x) \leq \frac{1}{M}R\]

がわかり,右辺のMはいくらでも大きくとれるので,これで示せました.

11

これは少し面倒です.
(1)はL^1 - L^{\infty}の双対性を使って具体的に共役作用素を表して,像に入らなさそうな元を考えます.
(2)はルベーグ測度の位相的性質,つまり連続関数による近似を使います.
ちゃんと書くと記述量が結構多くなるので端折り気味に書きます.
またL^1(\mathbb{R})^{\ast},l^1(\mathbb{N})^{\ast}はそれぞれL^{\infty}(\mathbb{R}),l^{\infty}(\mathbb{N})と同一視します.

(1)

定義に従って計算することによって,\varphi \in L^{\infty}(\mathbb{R})に対し,
T^{\ast}(\varphi) = (\int \varphi(x)\chi_n(x) dx)_n \in l^{\infty}(\mathbb{N})がわかります.

k,l \in \mathbb{N}\chi_k = 1_{(-1,0)},\chi_l = 1_{(0,1)}となるようにとります.
このとき,\delta \in l^{\infty}(\mathbb{N})を第k,l成分が1であとの成分はすべて0であるような元と定めます.\deltaT^{\ast}の像に含まれないことを示します.

背理法で示します.T^{\ast}(\varphi) = \deltaであると仮定します.
このとき\deltaの定義から,\int_{\mathbb{R}} \varphi(x)dx = \Sigma_{n=-\infty}^{\infty}\int_{(n,n+1)}\varphi(x)dx = 2が成り立ちます.

しかし,同時に\int_{\mathbb{R}} \varphi(x)dx = \Sigma_{n=-\infty}^{\infty}\int_{(n-1/2,n+1/2)}\varphi(x)dx = 0も成り立つので矛盾します.

よって,背理法より示されました.

(2)

まず,Ker T^{\ast}の元がどのようなものかあたりをつけます.
\varphi \in KerT^{\ast}とすると,任意の(\eta_n)_n \in L^{\infty}(\mathbb{R})に対して,\Sigma_n \eta_n\int_{I_n}\varphi(x)dx = 0より,
任意のn \in \mathbb{N}に対し,\int_{I_n}\varphi(x)dx = 0がわかります.

これより,\varphi1を周期に持つような感じの関数であることが分かります.
ここから確かに\varphi(\sigma f) = \varphi(f)が成り立ちそうな気がしてきます.
ただ当然のことながらL^{\infty}(\mathbb{R})の元の各点の値というのは意味を持ちませんから,
積分を通じてこの性質を使っていくことになります.

となれば,f \in \L^1(\mathbb{R})をとったときに,それを近似するような幅1/nの階段状の関数が取れれば良さそうです.
ここで幅1/nの階段状の関数とは,任意のk \in \mathbb{Z}に対し,
(k/n,(k+1)/n]上で定数となるような関数を考えています.

f \in \L^1(\mathbb{R})に対して直接そのような関数での近似を考えるのは難しいので,
まず,fを台がコンパクトな連続関数gL^1の意味で近似します.
これが出来るのは有名な事実ですし,証明も簡単なのでここでは認めて使います.

そして,そのgn \in \mathbb{N}に対し,(k/n,(k+1)/n] \ (k \in \mathbb{Z})上でn\int_{(k/n,(k+1)/n)}g(x)dxとなるような幅1/nの階段状の関数g_nを考えれば,gの一様連続性からg_ngL^1収束します.

よって結局,階段状の関数がL^1(\mathbb{R})で稠密であることが分かるので,
任意の階段状の関数gに対し,\varphi(\sigma g) = \varphi(g)を示せばよいことが分かります.
あとは計算です.

まずn \in \mathbb{N}, k \in \mathbb{Z}に対して,b_{n,k} = \int_{(k/n,(k+1)/n]} \varphi(x)dxと定めると,\int_{I_n}\varphi(x)dx = 0 \ (n \in \mathbb{N})より,b_{n,k} = b_{n,k + n}が成り立つことに注意します.

このときn次の階段状の関数gは,ある数列\{a_n\}_nを用いてg(x)= \Sigma_n a_n 1_{(k/n,(k+1)/n]}と書けます.
よって,\varphi(\sigma g) = \Sigma_k a_k b_{n,k+n} = \Sigma_k a_k b_{n,k} = \varphi(g)となるので示されました.

13

以前,(3)はチェルノフ型の不等式でも解けると書いていたのですが,
計算に誤りがあり,出来ていませんでした.4次モーメントの計算は問題なくできます.

(1)

これは簡単です.一応証明を書いておきます.

P[\lim_{n \to \infty} M_n < \infty] = \lim_{m \to \infty}P[ \lim_{n \to \infty}M_n < m]より,
P[ \lim_{n \to \infty}M_n < m] = 0を示せば十分です.

これは,
P[ \lim_{n \to \infty}M_n < m] = \lim_{n \to \infty} P[M_n < m] = \lim_{n \to \infty} P[N_1 < m]^n = 0
よりわかります.

(2)

概収束は(1)と大数の強法則を用いればすぐに分かります.
L^p収束は任意のm \in \mathbb{N}に対して\{S_n\}L^m有界であることを示せば,
一様可積分性の議論より従います.
\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty})の極限は中心極限定理からわかります.
XNは独立なので逐次積分に置き換えて中心極限定理を使います.

まず,大数の強法則より,\frac{\sum_{j = 1}^{n} X_j}{n} \to \theta (n \to \infty)\ a.s.がわかります,
(1)より,M_n \to \infty (n \to \infty) \ a.s.がわかるので,
確率1で,(S_n)_nは,\left( \frac{\sum_{j = 1}^{n} X_j}{n} \right)_nの部分列です.
よって,S_n \to \theta (n \to \infty) a.s.が分かります.
これで概収束は言えました.

次は任意のm \in \mathbb{N}に対して\{S_n\}L^m有界であることを示します.
これは簡単な計算で分かりますが,少し長いので簡略に書きます.

まず独立性から,E|S_n|^m = \sum_{k =1}^{\infty} \frac{1}{k^m}E[(\sum_{j=1}^{k} X_j)^m ]P[M_n = k]が分かります.E[(\sum_{j=1}^{k} X_j)^m ]を評価していきます.

Xの分布を使って,E[(\sum_{j=1}^{k} X_j)^m ] = \int_{(0,\infty)^k} (x_1 + \cdots +x_k)^m \theta^{-k}\exp(-\theta^{-1}(x_1 + \cdots +x_k))dx_1 \cdots dx_kがわかります.
この積分でy_1 = x_1 + \cdots +x_k , y_i = x_i (i = 2, \cdots ,k)と変数変換して計算すると,結局,
E[(\sum_{j=1}^{k} X_j)^m ] = \frac{(m+k-1)!}{(k-1)!} \theta^mが分かります.

よって,a_k = \frac{1}{k^m}\frac{(m+k-1)!}{(k-1)!}\theta^mと定めると,
E|S_n|^m = \sum_k a_k P[M_n = k]が分かります.
あとは(a_k)_kが有界であることが言えれば,(E|S_n|^m)_nnに寄らない定数で抑えられることが分かりますが,(a_k)_kの有界性はスターリングの公式より直ちにわかります.
よって,L^p収束が言えました.

最後に,\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty})n \to \inftyでの極限分布を求めます.
f : \mathbb{R} \to \mathbb{R}を有界連続関数とします.
E[f(\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty}))]n \to \inftyでの極限を求めます.

まず明らかに,\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty}) = \frac{\sum_{j=1}^{M_n} (X_j -\theta)}{\sqrt{M_n}}です.

また,中心極限定理より,E[f(\frac{\sum_{j=1}^{n} (X_j -\theta)}{\sqrt{n}})] \to E[f(\theta Z)] (n \to \infty)が分かります.
ここでZは平均0,分散1の正規分布に従う確率変数です.

(N_k)_k(X_k)_kの独立性から,
E[f(\frac{\sum_{j=1}^{M_n} (X_j -\theta)}{\sqrt{M_n}})] = E[E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n }]です.
E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n }f(\frac{\sum_{j=1}^{M_n} (X_j -\theta)}{\sqrt{M_n}})M_nを定数と見なして積分したものです.

ここで(1)より,M_n \to \infty(n \to \infty) \ a.s.が分かるので,
E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n } \to E[f(\theta Z)] (n \to \infty) a.s.が言えます.

また明らかに,|E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n }| \leq ||f||より,
ルベーグの収束定理から,E[E[f(\frac{\sum_{j=1}^{u} (X_j -\theta)}{\sqrt{u}})]|_{u=M_n }] \to E[E[f(\theta Z)]] = E[f(\theta X)] (n \to \infty)がわかります.

よって,\sqrt{M_n}(S_n - S_{\infty})n \to \infty\theta Zに分布収束します.

(3)

これは大変でした.まず,F_nを微分して極値を求められるので,T_nはexplicitに書けます.
そしてT_nの収束先の予想は立ちます.しかし問題となるのは実際に収束するのを示すことです.
概収束をどう示すかに僕は大いに悩みました.独立な要素が加わるわけでは無いので大数の強法則は使えませんし,マルチンゲールでもないので概収束定理も使えません.

ここではBorel-Cantelliの補題を使って概収束を示します.
Borel-Cantelliの補題を使うには確率の無限和を評価しなくてはなりませんが,ここはオーソドックスにモーメント型の評価で行けます.4次モーメントを評価します.

概収束が言えれば,あとは任意のp \geq 1に対して\{T_n\}L^p有界であることを示せば,
一様可積分性の議論より,L^p収束が分かります.

ただこれら全部の議論をするにはかなりの計算量が必要です.
院試の時間内に完全に解くのは個人的には現実的では無いと思います.
もちろんもっと楽な解法があるなら話は別ですが.

まずは,F_nが最大値をとるtの値を求めます.

    \[F_n(t) = \frac{1}{t^{N_1 + \cdots + N_n}}\exp(-\frac{(X_1 + \cdots + X_{N_1}) + \cdots + (X_1 + \cdots + X_{N_n})}{t})\]

より,\frac{1}{t^k}\exp(-\frac{a}{t}) (k \in \mathbb{N},a \geq 0)という形の関数の最大値とるtの値を求めればよいことになります.これは微分すればわかり,t=a/nのときに最大値を取ります.

よって,T_n = \frac{\sum_{k=1}^{n}\sum_{j=1}^{N_k}X_j}{U_n}となります,
ここでU_n = \sum_{k=1}^{n}N_kと定めました.

T_nの形からnを増やした時に独立な要素が加わる訳では無いことが分かるため,
極限は退化したものにはならないことが分かります.

T_nの分子にどれくらいの頻度でX_jが現れるのかを見たいので,
それを見るための確率変数を導入します.n,j \in \mathbb{N}に対し,
\varphi_{n,j} = \#\{ k \in \mathbb{N} | k \leq n ,N_k \geq j \} = \sum_{k=1}^{n}1\{N_k \geq j\}
と定めます.こうすると
T_n = \frac{\sum_{j=1}^{\infty} \varphi_{n,j}X_j}{U_n}と表せます.

大数の強法則より,

    \[\frac{\varphi_{n,j}}{U_n} = \frac{ \varphi_{n,j}}{n} \frac{n}{U_n} \to \frac{1}{2^{j-1}} \frac{1}{2} = \frac{1}{2^j} (n \to \infty) \ a.s.\]

が分かるので,T_nの分子に現れるX_jの個数の割合は全体の1/2^jに近づいていくことが予想されます.つまり,T = \sum_{j=1}^{\infty} \frac{1}{2^j}X_jに収束することが予想されます.

実際に概収束することを示していきますが,計算の過程でU_nが扱いにくいのと,X_jをセンタリングして扱いたいので,問題を少しreductionしておきます.

    \[T_n \to T \ a.s. \Leftrightarrow \frac{\sum_{j=1}^{\infty} \varphi_{n,j}(X_j - \theta)}{U_n} \to T -\theta \ a.s.\]

    \[\Leftrightarrow \frac{\sum_{j=1}^{\infty} \varphi_{n,j}(X_j - \theta)}{2n} \to T -\theta \ a.s.  \Leftrightarrow \sum_{j=1}^{\infty}(\frac{\varphi_{n,j}}{2n} - \frac{1}{2^j})(X_j - \theta) \to 0 \ a.s.\]

が成り立つので,一番右を示します.2つ目の同値では大数の強法則を用いています.
V_n = \sum_{j=1}^{\infty}(\frac{\varphi_{n,j}}{2n} - \frac{1}{2^j})(X_j - \theta)と定めます.

Borel-Cantelliの補題より,任意の\epsilon > 0に対し,
\sum_{n=1}^{\infty} P[|V_n| > \epsilon] < \inftyが言えれば,V_n \to 0 \ a.s. (n\to \infty)が分かります.

\epsilon > 0を固定します.
nによらない定数C >0に対し,P[|V_n| > \epsilon] \leq C/n^2と出来ることが言えれば十分です.
これを示すためにチェビシェフの不等式を用いて4次モーメントを評価します.
何故2次ではなく4次かというと2次ではP[|V_n| > \epsilon] \leq C/nまでしか出ないからです.
計算が結構面倒なので端折り気味に書きます.
V_nは無限和で扱いにくいのでまずは有限和の話に落とし込みます.

ここでV_{n,k} = \sum_{j=1}^{k}(\frac{\varphi_{n,j}}{2n} - \frac{1}{2^j})(X_j - \theta)です.
P[|V_{n,k}| > \epsilon]をチェビシェフの不等式とヘルダーの不等式を用いて評価していきます.

ここでm_{n,i} = E\left[\left(\frac{\varphi_{n,i}}{2n} - \frac{1}{2^i}\right)^4 \right]です.
よって次はm_{n,i}を評価していきます.

となりますが,1\{N_p \geq i\} - \frac{1}{2^{i-1}}は2点にのみ値をとる関数なので簡単に期待値が計算でき,
あるn,iによらない定数C'' > 0がとれて,

    \[E\left[\left(1\{N_p \geq i\} - \frac{1}{2^{i-1}}\right)^4\right],E\left[\left(1\{N_p \geq i\} - \frac{1}{2^{i-1}}\right)^2\right] \leq C'' \frac{1}{2^i}\]

とできます.

よってこれより,あるn,iによらない定数C >0がとれて,\sum_{i=1}^{\infty} m_{n,i} \leq C\frac{1}{n^2}となることが分かり,
P[|V_n,k| > \epsilon] \leq C/\epsilon^4 n^2が言えるので,概収束が言えました.

最後に任意のm \in \mathbb{N}に対し,T_nL^m有界であることを示します.
(X_n)(N_n)の独立性から,


がわかります.E\left[\left( \sum_{j=1}^{\infty} p_{n,j} X_j \right)^m\right]を評価していきます.
\varphi_{n,j}の定義から,確率1で,有限個のjを除いてp_{n,j} = 0が分かります.

よって,(a_1X_1 + \cdots +a_kX_k)^m , k,a_1, \cdots ,a_k \mathbb{N}という形の確率変数の期待値を評価すればよいことになります.
E[X^l] = l!\theta^lであることに注意すると,単純な計算から,

がわかります.
よって,E\left[\left( \sum_{j=1}^{\infty} p_{n,j} X_j \right)^m\right] \leq m! \theta^m (\sum_{j=1}^{\infty} p_{n,j})^mがわかるので,
\sum_{j=1}^{\infty} \varphi_{n,j} = U_nから,E|T_n|^m \leq m!\theta^mを得ます.
よって,(T_n)_nL^m有界性がわかり,これですべて示せました.

書評:原啓介『測度・確率・ルベーグ積分 応用への最短コース』(講談社)

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2017 年 9 月 20 日に講談社から『測度・確率・ルベーグ積分 応用への最短コース』(原啓介著)が出版されました.タイトルからわかるように応用の人向けの測度論と確率論の入門書です.

どんな内容か気になったので書店で立ち読みしてきました.
それで幾つかこの本の特徴といえる点があると思いましたので,ここにまとめておきます.

立ち読みしただけで書評を書くというのはあまり褒められたことではないとは思いますが,
結構念を入れて立ち読みをしてきたのでご容赦願います.

まず,出版社と著者の書誌情報ページへのリンクを貼っておきます.
著者のページからは正誤表,前書き,目次が見られます.
『測度・確率・ルベーグ積分 応用への最短コース』(原 啓介)|講談社BOOK倶楽部

「測度・確率・ルベーグ積分 応用への最短コース」の情報 – 原啓介(HARA, Keisuke)


さて,どのように書評を進めていくかですが,まずこの本の概要を述べます.
次にこの本の特徴とそのメリット・デメリットを列挙し,その後,それらを総合してこの本が有益なものとなる読者層の検討及びそれらの人がどのようなスタンスで読むのが良いかについて私見を述べます.

本の概要

本の内容
タイトルの通り,測度論と確率論の入門書です.「応用への最短コース」とあるように数学のユーザー向けのミニマムな知識を提供することを目的とした本です.前書きを見る限り,具体的な想定読者は機械学習や情報科学の分野の人のようです.

本の構成
0章から7章までの8つの章からなります.0章はルイスキャロルのエピソードから測度論的確率論の必要性を説くというイントロになっています.1章から5章までは主に測度論一般の話題です.随所に関連する確率論の話題が挿入されています.6章は不等式の話です.この本で唯一の関数解析っぽい話です.最後の7章が確率論の章で,ここでは極限定理等の確率論の基礎的な話題がダイジェスト的に記されています.

特徴1:扱っている内容は基礎事項のみ,ただし網羅性は十分では無い

入門書なので当然のことですが,この本で扱われているトピックは最初から最後まで測度論・確率論の基礎事項のみです.ここに書かれていることは測度論・確率論を使うなら知っていなくてはならない事柄ばかりです.これは無駄なく学べるという点でメリットです.
また,現れる概念はすべて正確に定義されますし,手を動かして調べられる例が複数載っているのも良いです.

しかし気になるのは網羅性,つまりこの本だけで基礎事項は十分に学べるかです.
どれだけで十分かは読者によって異なるので一概には言えませんが,僕は少し足りないと思います.

測度論については単調収束定理,Fatouの補題,Lebesgueの収束定理,Fubiniの定理,積分と偏微分の交換定理,ラドン-ニコディムの定理などの測度空間一般に関する基礎事項は確かに網羅されています.

しかし位相空間と関連した話題が無いのが気になります.具体的には測度の正則性や連続関数による可測関数の近似についてです.これらは非常によく使うものですし,実数値確率変数の分布収束を論じる際にも必要です.せめてルベーグ測度についてだけでも,これらが書かれていればと思います.

確率論についての内容は本当に基礎的な部分だけで,恐らくこの本で確率論の入門書としての機能を果たすことは想定しておらず,基本的な枠組の紹介を目的としていると思います.
その観点で見る限りは特に不満はありません.

ただこの本では条件付期待値の説明を重視しているのですが,それであれば条件付き期待値が有効に用いられている確率論の話題があると良かったように思います.
例えば,マルチンゲールやマルコフ過程の理論の簡単な紹介や,disintegrationについての言及があると良いと思います.

しかしこれは僕の願望かもしれません.この本の前書きには機械学習や情報理論での確率論の利用について記されていて,それらについては条件付期待値の部分で例を挙げて丁寧に説明されています.
そういう意味で僕の意見は著者の目的にそぐわないものであるのかもしれません.

特徴2:証明が少ない

この本には多数の命題が現れますが,正式な形で証明が書かれているのは恐らく1割もありません.
ほとんどは,証明の「気持ち」を簡略に説明するか,単に「省略する」と書かれています.

これは理論を綿密に理解しようという人には向いていません.
しばしば定理の内容そのものよりも証明の考え方やテクニックの方が役立つからです.

しかし,応用の人は勿論,数学を学ぶ人にとっても,最初に理論の概略を知るうえでは有益だと思います.最初から証明を追って,細かい部分で詰まり,ぐるぐると考え続けているうちに力尽きるというのは誰にでもある経験だと思います.それを避け,とにかく何ができるかを知り,使ってみるというのは最初のステップとして有効です.この本はそれを可能にしています.これは大きな長所です.

一方で,数学は分からないなりに手を動かしながら証明を追っていく経験を積み重ねるうちに自然と使えるようになるという「慣れ」の側面があるので,入門書だからと言って詳細を省くのは必ずしも良いとは言えません.
しかしこれは上の長所と両立するのは困難ですので,この本の短所というのは不当でしょう.

特徴3:テクニカルな部分には立ち入らない

測度論には結構テクニカルに面倒な部分があります.多くは完備化や直積空間上の可測集合の切り口に関するもので,入門段階ではそれほど問題にならない部分ですが,Fubiniの定理では少し問題になります.この本では直積空間を完備化した場合のFubiniの定理は扱っていません.
他にも本来であれば,「a.e. (almost everywhere)」と書かれていなければならない部分に何も書いていなかったりします.一応脚注に簡略な注意はありますが.
これらは微妙なラインではありますが個人的には入門段階では混乱を防ぐために端折るのはありだと思います.

また,著者ページの正誤表に読者からの証明の不備の指摘とその返答が並んでいるのですが,その返答の中にはいくつか「面倒なのでサボりました」というような記述があります.このように証明の完全さよりも記述の簡明さを優先している点がいくつかあります.これは証明を厳密に理解したい人には迷惑な話かもしれませんが,そもそもこの本の証明の少なさからして,自己完結的なテキストを志向しているわけでは無いと思いますのでこれもデメリットとは言えません.

特徴4:ページ数が少ない

この本のページ数は160ページです.末尾の演習問題解答,参考文献,索引で30ページほどあるので,メインの部分は130ページ程でしょう.これはかなり薄いです.例えば薄い数学書である,裳華房の内田伏一『集合と位相』は200ページちょいです.これと比べても随分少ないです.文字もそれほど小さくありません.速習コースを想定しているであろうこの本においてはコンパクトさは美点と言えるでしょう.また寝転がって読んでも腕が疲れないのも良いです.

対象となる読者層と読むときの注意点

以上の特徴を踏まえて,どのような人にとってこの本が有益かを検討していきます.

第一の対象となるのはやはり確率論を道具として使う人です.
しかし,確率論ユーザーといっても一枚岩ではないでしょう.
少なくとも次の2種類はいると思います.

・ブラックボックスで良いから確率論で何ができるかが知りたい人
・応用分野の基礎部分の理解を深めたい人

前者に対してはこの本で十分だと思います.とにかくこの本を読み通して,必要に応じてこの本に書かれている主張を用いるというハンドブックとしての利用がいいと思います.薄くて軽いので持ち運びも便利です.

後者の人はこの本の知識で足りた場合はそれでいいと思いますが,足りない場合には,この本を通過してより詳しい本を読みましょう.この本を詳しく読んでも深い知識は得られません.そのため,あえてこの本を買わなくてもいいと思います.次により詳しい本を読めば,ほぼオーバーラップするようなことが書いてあるからです.この本はすぐに読破できますので図書館などで借りるので十分です.
勿論,この本を読んで恩義を感じたならば著者のためにも買うのが良いと思いますが.

第2の対象は測度論を学び始める人です.特徴2のところでも書きましたが,この本の1番の長所は数学的に正しい内容(少し証明が雑なところはありますが)で絶対に必要なものがコンパクトにまとまっていることです.理論の正確な理解はこの本でする必要はありません.具体例をきっちり理解するのを重視してさらっと読み通して,数学徒向けの入門書を読み始めるのが良いと思います.

あとは数学のことはあまり知らないけれど確率論についての考えがある人が読むのもいいと思います.上では言及しませんでしたが第1章にいわゆる「確率のパラドックス」などと呼ばれるトピックについてルイスキャロルを交えて説明しています.
この手の話題は度々,数学的に確率論をやっている人とそうでない人の間で論争になることですが,数学的に確率論をやっている人がどういう枠組みで話をしているのかを理解するのはプロトコルの相違による紛糾を避けることができ有益だと思います.
勿論,測度論的確率論が唯一正しい枠組みだというつもりはありません.

以上です.

院試問題 東大 数理科学研究科 平成28年 専門科目B

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院試問題解答作成基本方針

問題は↓から見られます.
平成30(2018)年度修士課程入学試験について | 東京大学大学院数理科学研究科理学部数学科・理学部数学科


11

定番の一様可積分性の問題です.ただ一様可積分からL^1収束を導かせる問題が多いのに対し,これは逆向きの議論をさせる問題です.
一様可積分性についての基礎事項は朝倉書店の舟木直久『確率論』にまとまっています.

(1)

これはルベーグの収束定理から明らかです.

(2)

f_nの値が大きい部分の積分」をnに関して一様に潰したいわけです.ルベーグの収束定理から「f_nの値が小さい部分の積分」は「fの値の小さい部分での積分」へと収束することは言えそうで, また,仮定より,全体での積分の収束は言えます.
「値の大きい部分での積分」は「全体の積分」と「値の小さい部分での積分」の差で書けるので,
nが十分大きい時には「f_nの値が大きい部分での積分」は「fの値が大きい部分での積分」に近いことが分かりそうです.あとは(1)を使えば示せそうです.

当たり前のことを長々と書きましたが,この問題の難しい所は上の方針を実行するときにある幾つかの細かい部分だと思います.

まず,値が小さい部分での積分の収束を言いましょう.
ここは少し慎重さが必要です.
f_nの値がKに収束するときに,f_nKで切った関数f_n(x)1_{\{f_n \leq K \}}の極限がどうなるかを見なくてはなりません.

    \[f(x)1_{\{ f < K\}} \leq \liminf_{n \to \infty} f_n(x)1_{\{ f_n \leq K\}} \leq \limsup_{n \to \infty} f_n(x)1_{\{ f_n \leq K\}} \leq f(x)1_{\{ f \leq K\}}\]


が成り立つことに注意します.これは\limsup, \liminfが最大,最小の集積値であることを用いて,
部分列をとって議論すれば容易に示せます.

この不等式から\mu\{f = K\} = 0なるK>0に対しては,\lim_{n \to \infty}f_n(x)1_{\{ f_n \leq K\}} = f(x) 1_{\{f \leq K\}} a.e.であることが従います.
また\mu\{f = K\} > 0なるKは高々可算個しかありません.何故なら,\muが有限測度であることから\mu\{f = K\} > \frac{1}{n}なるKは有限個しか無いためです.

K > 0を任意にとります.Kに対し,L(K) > K\mu\{f = L(K) \}= 0なるL(K)をとります.
このとき,

    \[\int_X f_n(x)d\mu(x) = \int_{\{f_n < L(K)\}} f_n(x)d\mu(x) + \int_{\{f_n \geq L(K)\}} f_n(x)d\mu(x)\]


の第1項はルベーグの収束定理からn \to \infty\int_{\{f < L(K)\}} f(x)d\mu(x)に収束します.

よって仮定の,\lim_{n \to \infty }\int_X f_n(x)d\mu(x) = \int_X f(x)d\mu(x)より,
\lim_{n \to \infty} \int_{\{f_n \geq L(K)\}} f_n(x)d\mu(x) = \int_{\{f \geq L(K)\}} f(x)d\mu(x)を得ます.

これで値の大きい部分の積分の収束が分かりました.
最後に値が大きい部分の積分を一様に潰します.

\epsilon > 0を任意にとります.ここで改めてK>0を,\int_{\{f  \geq K\}}f(x) d\mu(x) < \epsilonとなるようにとります.
このとき,ある自然数Nが存在し,任意のn \geq Nなる自然数nに対し,

    \[\int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) \leq \int_{\{f \geq L(K)\}} f(x)d\mu(x) + \epsilon\]


とできます.L(K)の取り方より,\int_{\{f \geq L(K)\}} f(x)d\mu(x) < \epsilonが成り立ちます.

よって,n \geq Nで,(1)より,\int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) \leq 2\epsilonが成り立ちます.
ここで(1)をf_1からf_{N-1}に対して考えると,Kを大きく取り直すことで,n < Nに対しても,
\int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) \leq 2\epsilonが言えます.
つまり,

    \[\sup_{n}\int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) \leq 2\epsilon\]


がわかります.これより,\lim_{K \to \infty} \int_{\{f_n \geq K\}} f_n(x)d\mu(x) = 0がわかります.

12

(1)

僕は最初この問題の方針を誤り,かなり迷走しました.
この誤りはある程度普遍的なものだと思いますので,最初にそれを紹介して,その後正答を書くことにします.

僕が最初に考えた方針はf \in {L^{\infty}(\marhbb{R})}^{\ast}を具体的に定義するという方針でした.\varphi \in BC(\mathbb{R})に対し,\varphi (0)を対応させるのですから,原点付近の情報のみを使うことになります.そのような線形汎関数として自然なのは,「原点の近傍上で積分して,それをその近傍の測度で割る」という汎関数を考え,その近傍を潰した極限の汎関数で定義するものでしょう.
最初この方針で示そうとしたのですが収束が示せませんでした.

途中,汎弱位相においてノルム位相に関する閉単位球はコンパクトであるという定理(Alaogluの定理)を使って,収束先がとれる,とも考えましたが,L^{\infty}(\mathbb{R})は可分ではないため,{L^{\infty}(\marhbb{R})}^{\ast}の閉単位球は距離化可能でなく,汎弱コンパクトと汎弱点列コンパクトが一致するか分からないということに気づきました.その後,一致しないことが示せました.

このあたりで,この汎関数をexplicitな形もしくはexplicitな形の極限で書くのは多分無理というような感じがしたので,
超越的な構成法を考えたところHahn-Banachの拡張定理を思い出しました.これを使えばすぐです.

では証明です.

BC(\mathbb{R})L^{\infty}(\mathbb{R})の部分空間とみなせます.
BC(\mathbb{R})上の線形汎関数\psi\psi(u) = u(0) \ (u \in BC(\mathbb{R}))と定めると,
これは明らかにBC(\mathbb{R})上の有界線形汎関数です.あとはHahn-Banachの拡張定理を用いて,L^{\infty}(\mathbb{R})上の有界線形汎関数\varphiに拡張すれば良いです.

(2)

背理法で示します.直観的にはそのようなvがあれば,原点のみに台を持つものになりそうです.
しかし,ルベーグ測度に関して可積分な関数で,そのような性質をもつものは0に限られます.
このイメージを証明に落とし込みます.

任意のu \in BC(\mathbb{R})に対し,f(u)=0となることを示すことによって矛盾を示します.

g_n \in BC(\mathbb{R})0 \leq g \leq 1, g(x) = 0 \ on [-\frac{1}{n},\frac{1}{n}], g(x) = 1 \ on {[-\frac{2}{n},\frac{2}{n}]}^cとなるようにとります.
このとき,u \in BC(\mathbb{R})に対し,ug_n \in BC(\mathbb{R})より,f(ug_n)= 0です.

一方,ルベーグの収束定理定理より,\int u(x)g_n(x)v(x)d\mu(x) \to \int u(x)v(x)d\mu(x) \ (n \to \infty)がわかるので, f(ug_n) \to f(u) \ (n \to \infty)となります.

よって,結局f(u)=0となります.
これで矛盾が言えました.

14

確率論の問題です.単純な独立確率変数の和の話ではないのでマルチンゲール等の便利な道具は使えません.地道にやっていきます.

(1)

具体的な値を求める必要はありません.k十分大でk^p \leq a^k (a >1)であることを使えば有限なことは分かります.

(2)

独立なのでX_jの値ごとに分けてやれば(1)から有限なことが言えます.

(3)

これもただの計算です.

(4)

これは少し面倒です.もしかしたらもっと簡単な回答があるかもしれません.

S_nU_jの相加平均ですが,U_j = Y_{X_j}X_kkが大きくても大きな値をとるとは限らないため,nを増やした時に独立な要素が加わる訳ではありません.
つまり,独立確率変数の相加平均のように極限が定数に退化するようなことは期待できません.

まずは収束先のあたりをつけましょう.\{X_k\}_kは独立同分布であることから,
\{X_k\}_kの値をプロットして度数分布表を作ったとすると,
サンプル数を非常に大きくすれば,その概形(あるスケールで見た時の形)はX_1の分布に近づくことが予想できます.
つまり,\{U_k\}_kのうちY_jに一致するものの割合は\frac{\lambda^k}{k!}\exp(-\lambda)であることが予想されます.

そこでS_{\infty} = \Sigma_{j=0}^{\infty} \frac{\lambda^j}{j!}\exp(-\lambda)Y_jと定めます.
S_{\infty}が概収束,L^2収束するのは独立確率変数の和の理論,若しくはマルチンゲール理論からわかるので,問題なく定義できます.
次に,S_nS_{\infty}L^2収束することを示します.

S_nS_{\infty}への収束は\{U_j\}_jの集まりとしての性質が問題であり,個別のU_jがどのY_kに一致するかはどうでもよいです.
もっと正確に言うと,nを止めるごとにU_0からU_{n-1}までの間にY_jが何度現れているのかに興味があります.
となるとS_nはこの目的にあった形に変形しておくと便利です.次の関数を導入します.

k,n \in \mathbb{N}に対し,N_{k,n} = \# \{ i \leq n-1 | X_i =k \}と定めます.
\#は集合の元の個数を表します.
N_{k,n}j0からn-1まで動くとき,U_jY_kに一致する回数を表します.
明らかにN_{k,n} = \Sigma_{j=0}^{n-1} 1\{X_j = k\}です.
この和は独立同分布の2項分布に従う確率変数の和になっています.

さて,このN_{k,n}を用いると,S_n = \frac{1}{n} \Sigma_{j=0}^{\infty}N_{j,n}Y_jと書けます.
ここでN_{j,n}Y_jが独立であることに注意です.

ここまでくれば後は計算です.E[|S_n - S_{\infty}|^2]を独立性を使って計算していきます.
長いので途中式は結構飛ばしています.

途中で現れている,Z_jP\{Z_j = 1\} = 1- P\{Z_j = 0\} = \frac{\lambda^j}{j!}\exp(-\lambda)を満たす確率変数です.N_{j,n}n個のZ_jと同分布な独立な確率変数の和になっています.
よって,収束が言えました.

(5)

(4)では, E[S_n - S_{\infty}|^2]の計算をしましたが, ここではE[S_n - S_{\infty}|^4]の計算をしていきます. 

少しややこしいですが, いくつか定義をしておきます.

M_{i,n} = N_{i,n} - n \frac{\lambda^i}{i!}\mathrm{e}^{-\lambda}, W_{i,n} = M_{i,n}(Y_i - \lambda), a_{i,n} = E[M_{i,n}^4], b = E[(Y_j - \lambda)^4], c = E[(Y_j - \lambda)^2], d_i = E\left[\left(1\{X_1 = i\} - \frac{\lambda^i}{i!}\mathrm{e}^{-\lambda}\right)^4\right].

このとき以下の計算が成り立ちます. 長いので多少省略気味に書いていますが, 基本的にはシュワルツの不等式と独立性と平均0であることを使っているだけです.

(1)   \begin{align*}E|S_n - S_\infty|^4 &= \frac{1}{n^4}E\left|\sum_{j=0}^{\infty}\left( N_{j,n} - n\frac{\lambda^j}{j!}\mathrm{e}^{-\lambda} \right)(Y_j - \lambda) \right|^4  \\&= \frac{1}{n^4}\sum_{i,j,k,l = 0}^{\infty}E[W_{i,n}W_{j,n}W_{k,n}W_{l,n}]  \\&= \frac{1}{n^4}\sum_{i = 0}^{\infty}E[W_{i,n}^4] + \frac{1}{n^4}\sum_{i,j = 0, i \neq j}^{\infty}E[W_{i,n}^2W_{j,n}^2]  \\&= \frac{b}{n^4}\sum_{i = 0}^{\infty}a_{i,n} + \frac{1}{n^4}\sum_{i,j = 0, i \neq j}^{\infty}E[W_{i,n}^2W_{j,n}^2]  \\&\leq \frac{b}{n^4}\sum_{i = 0}^{\infty}a_{i,n} + \frac{c^2}{n^4}\sum_{i,j = 0, i \neq j}^{\infty}\sqrt{a_{i,n}a_{j,n}}  \\&\leq \frac{b}{n^4}\left( \sum_{i = 0}^{\infty}\sqrt{a_{i,n}}\right)^2. \end{align*}

ここで, 容易にd_i \leq 8 \frac{\lambda^i}{i!}\mathrm{e}^{-\lambda}がわかり, このことから(例えばスターリングの公式を使うことで),

(2)   \begin{align*}\sum_{i = 0}^{\infty}\sqrt{d_i} < \infty. \end{align*}


がわかります.  よって, ある定数C > 0に対し, 次が成り立ちます:

(3)   \begin{align*}|E[S_n^4]^{1/4} - E[S_\infty^4]^{1/4}|^{4} \leq E|S_n - S_\infty|^4 \leq \frac{C}{n^2}. \end{align*}


よってES_n^4 \xrightarrow{n \to \infty}ES_{\infty}^4が示されました.

院試問題 東北大 数学専攻 平成28年 選択問題

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過去の大学院入試問題 | 東北大学大学院理学研究科数学専攻

5,6,7を解きます.

5

測度論の基礎的な知識を問う問題です.
集合列に対する\limsup,\liminfの使用に慣れていないと少してこずるかもしれません.
この問題には出ていませんが,\liminfの方の定義は,
\liminf_{n \to \infty} = \bigcup_{n=1}^{\infty}\bigcap_{k=n}^{\infty}A_kです.

\limsup,\liminfに関して最低限覚えておきたいのは次の事実です.
命題―――
\limsup_{n \to \infty}A_n = \{x |無限個のkについてx \in A_k \}
\liminf_{n \to \infty}A_n = \{x |有限個のkを除いてx \in A_k \}
―――

これらはどちらも定義からすぐにわかります.

(1)

これは確率論では知らない人のいないBorel-Cantelliの補題の一部です.
一応証明しておきましょう.

まず,測度の単調性から任意のN \in \mathbb{N}に対し,
\mu(\limsup_{n \to \infty}A_n) \leq \mu(\bigcup_{k=N}^{\infty}A_k).
次に,測度の劣加法性から,
\mu(\bigcup_{k=N}^{\infty}A_k) \leq \Sigma_{k=N}^{\infty}\mu(A_k).
\Sigma_{n=1}^{\infty}\mu(A_n) < \inftyより,\lim_{n \to \infty}\Sigma_{k=n}^{\infty}\mu(A_k) = 0.
よって示された.

(2)

変わった問題です.B_nの定義がパッと見では分かりにくいですが,落ち着いてやれば解けます.

まずはn=3のとき.

k \geq 4に対し,|x - \frac{k}{3}| < \frac{1}{3^a}とすると,三角不等式から,
|x| > \frac{k}{3} - \frac{1}{3^a} > \frac{k-1}{3} > 1より,x \in (0,1)とはなりえない.
よって,3と互いに素な正整数として1,2のみを考えればよい.

あとは定義に従って確かめれば,

    \[B_3 = \left( \frac{1}{3} - \frac{1}{3^a},\frac{1}{3} + \frac{1}{3^a}\right) \cup \left( \frac{2}{3} - \frac{1}{3^a},\frac{1}{3} + \frac{1}{3^a}\right)\]

ここで,この2つの区間は交わらないことに注意が必要です.これはa>2からわかります.

よって,\mu(B_3) = \frac{4}{3^a}.

n=4のときも同様なので省略します.

(3)

(1)から,\Sigma_{n=1}^{\infty}\mu(B_n)  <\inftyを示せば十分です.
(2)と同様にしてn \in \mathbb{N}に対して,nと互いに素な正整数はn以下のもののみを考えればよいことが分かります.
B_n \subset \bigcup_{k=1}^{n-1}\left( \frac{k}{n} - \frac{1}{n^a},\frac{k}{n} + \frac{1}{n^a} \right)
より,\mu(B_n) \leq \frac{2}{n^a} n = \frac{2}{n^{a-1}}.
a>2より\Sigma_{n=1}^{\infty}\frac{2}{n^{a-1}} < \infty.

6

これは畳みこみの事が分かっていれば難しくは無いです.
ただ計算量はなかなかあります.

(1)

まずは,弱収束を示します.
次の命題が分かっていれば簡単です.
命題―――
g \in L^1(\mathbb{R})に対し,次が成り立つ.

    \[\lim_{R \to \infty}\int_{[-R,R]^c}|g|dx = 0\]

―――
これの証明はルベーグの収束定理で一発です.
\rhoの台が[-M,M]に含まれているとし,h \in L^2(\mathbb{R})としましょう.
このとき,ルベーグ測度の平行移動不変性を用いれば,
\int_{\mathbb{R}} u_n(x)h(x)dx = \int_{[-M-n,M-n]} u(x)h(x)dxがわかります.
あとはHolderの不等式を使った後,上の命題を用いればこの積分は0に収束することがわかります.

次に,0に強収束しないことを示します.
これは,再び平行移動不変性を用いれば,Fu_n(x) = Fu(x+n)がわかるので,||Fu_n||_2 = ||Fu||_2.
よって,||Fu||_2 \neq 0を言えばよいことになります.
f,\rhoはともに恒等的に0ではないので,あるp,q \in \mathbb{R}とある\epsilon,\delta > 0が存在して,
f > \epsilon\  on\  (p - \delta, p + \delta ),\rho > \epsilon\  on\  (q - 2\delta, q + 2\delta )とできる.
-\delta <\alpha < \deltaに対し,

    \[Fu(p+q+ \alpha)\]

    \[\geq \int_{(q - \delta, q + \delta )}f(p+q+\alpha-y)\rho (y)dy\]

    \[\geq \int_{(q - \delta, q + \delta )}f(p+q+ \alpha - y)\epsilon dy\]

    \[\geq \int_{(q - \delta, q + \delta )}{\epsilon}^2 dy\]

    \[= 2\delta {\epsilon}^2\]

よってFu \geq 2\delta {\epsilon}^2 \ on\  (p + q - \delta,p + q + \delta)より,||FU||_2 \neq 0.

(2)

これはかなり粗い評価で問題なく行けます.supで抑えても,Holderを使ってもどっちでも大丈夫です.とりあえず手を動かせば解けるという感じです.

    \[{||Gu||_2}^2\]

    \[= \int_{\mathbb{R}} \exp^{-|x|}|Fu(x)|^2 dx\]

    \[\leq \int_{\mathbb{R}} \exp^{-|x|} \int_{\mathbb{R}} |f(x-y)|^2 |u(y)|^2 dy dx\]

とここまで計算したら,Fubiniの定理を使って積分順序を入れ替え,
f||f||_{\infty}で上から抑えれば,

    \[||G||  \leq \sqrt{2}||f||_{\infty}\]

が得られます.

(3)

{||Gv_n||_2}^2 = \int_{\mathbb{R}} \exp^{-|x|} {\left(\int_{\mathbb{R}}f(x-y) v_n(y) dy \right)} ^2dxであり,
v_n0に弱収束することから各x \in \mathbb{R}に対し,\int_{\mathbb{R}} f(x-y) v_n(y) dy  \to 0 \ (n \to \infty).

また,(2)と同様に評価すれば,

    \[\left| \int_{\mathbb{R}}f(x-y) v_n(y) dy \right| \leq ||f||_{\infty} ||v_n||_2\]

であり,\{v_n\}は弱収束することから有界となるので,
\left| \int_{\mathbb{R}}f(x-y) v_n(y) dy \right|x, nによらない定数で上から抑えられます.
これより,\int_{\mathbb{R}} \exp^{-|x|} \int_{\mathbb{R}}f(x-y) v_n(y) dy dxに対して,ルベーグの収束定理が使えて,n \to \infty0に収束することが分かります.

7

複素関数論の問題です.留数計算も特に必要としない,初等的な計算だけで解けます.
ただ(2)は計算の仕方に気を付けないと,式が大変なことになります.
僕は最初,しくじりました.

(1)

{\left( z + \frac{c}{z}\right)}^nを展開して,zのべきに注意すれば求まります.

(2)

一見いかつい数式ですが,左辺をよく見ると,\cos\theta ,\sin\thetaの1次結合のべきを展開したような雰囲気があります.ただ項のべきが2つ飛びになっていることから,虚数を含む1次結合のべきの実部,または虚部を見た物だろうという予想が立ちます.こうなると(1)の式を曲線Cに沿って積分して,
指数関数を三角関数で表せば何とかなりそうな気がしてきます.

計算をする際には{\left( \exp^{i\theta} + c \exp^{-i\theta}\right)}^nを展開する前に三角関数に直しておきましょう.展開してから三角関数に直すと大変なことになります.

結局,I_{2m}の虚部を見れば,等式が導けます.

院試問題解答作成基本方針

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数学系の大学院の院試問題の解答を公開していこうと思います.
僕は解析系の人間で,幾何や代数は全然分からないので,解析の問題を中心に解きます.
解答は結構雑なものになると思います.その理由はきっちりと書くのは時間がかかるからです.
雑といっても厳密でない証明という訳では無くて,誰でもわかる細部を省略するということです.
つまり,論法やアイデアはちゃんと書くつもりでいます.

雑すぎてわからないと感じた場合はコメントを頂ければ補足説明をします.
また,基本的には旧帝の問題を解いていこうと思ってますが,何か解いてほしい問題があればこれもコメント欄まで.解ける限りは対応します.

最後に,何故院試問題の解答を公開しようと考えたかについて少し述べておきます.
それは端的に僕が院試勉強で苦労したからであり,解答集があればもう少し楽だったと思うからです.

院試勉強において自分で考えるというのはもちろん大事ですが,多くの人は自分の専門の勉強があり,院試勉強に割ける時間というのは限られています.そんな中で分からない問題を延々と考え続けるというのは非効率的ですし,精神衛生上もよくありません.それを解決したいというのが1番にあります.

ただ院試勉強というのは必ずしも無駄なものでは無くて,今まで学んだことを具体的な問題に適用することを通じてより理解が深まるというのはありますし,問題を解くことを通じて知らなかった論法を知ることもあります.

しかし,この院試問題を通じて,汎用性のある論法を知るというのは案外難しく,目の前の問題を見ているだけでは気づけないこともあります.そういうときに,既に理解している人から一歩引いた地点から問題を見る視点を教えてもらうことは非常に理解の助けになると思っています.

僕の知識はそう大したものではありませんが,そのような視点を伝えるというのも解答公開の目的の1つです.


院試問題 東北大 数学専攻 平成29年 選択問題

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院試問題解答作成基本方針

問題は↓から見られます.
過去の大学院入試問題 | 東北大学大学院理学研究科数学専攻


5,6,7のうち解けるのを解きます.

5

個人的に院試問題の定番だと思っている一様可積分性の問題です.
一様可積分性の話は確率論を学んだことがある人は確実に知っていますが,
そうでない人は解析系でも意外に知らない人が多いような気がします.

一様可積分性について知りたい人は朝倉書店から出ている舟木直久『確率論』にまとまっています.
別にこの本でなくても確率論の入門テキストには大体ありますが,僕はこれで学んだので.

一様可積分性の定義―――
(\Omega,\mathcal{F},\mu)を有限測度空間,\{f_n\}_nを可測関数列とする.
このとき,\{f_n\}_nが一様可積分であるとは,

    \[\lim_{\lambda \to \infty} \sup_n \int_{\{|f_n| > \lambda\}}|f_n| d\mu = 0\]

をみたすことである.
―――

無限測度空間の場合にも,似たような感じで一様可積分性は定義されますが,ここでは扱いません.
一様可積分性の話で最も基本的なのは次の定理です.

定理―――
\{f_n\}_nを可測関数列とし,f_n \to f (n \to \infty )\ a.e.とする.
このとき次は同値.
(1)\{f_n\}_nは一様可積分
(2)\int |f_n - f|d\mu \to 0 (n \to \infty)
―――

この定理は有限測度空間に限っているとはいえ,ルベーグの収束定理の一般化になっています.
これも証明は舟木先生の本に書いてあります.それほど難しくはありませんし,証明も短いです.
この定理を院試の際に事実として使うのはまずいと思いますが,その場で証明しつつ解答を作成することは可能なので覚えておいて損は無いです.以下の解答では上の定理の少し弱いものを証明しつつ解答します.

とはいえ一様可積分の条件が容易に確かめられなくては意味がありません.幸いなことに有用な十分条件があります.これが十分条件であることを確かめるのも容易です.

命題―――
\{f_n\}_nを可測関数列,p >1とする.
このとき,
\sup_n \int |f_n|^pd\mu < \infty \Rightarrow \{f_n\}_nは一様可積分
―――

あと1つ注意をしておくと,一様可積分周辺の話を使わなくてもEgorovの定理でも大抵同じようなことが示せます.
Egorovの定理の証明は上述の舟木先生の本にもありますし,測度論の入門書にも大抵あります.例えば裳華房の伊藤清三『ルベーグ積分入門』.

前置きが長くなりましたが解答に入ります.

上記の事を知っていれば問題を見た途端に,有限測度空間,L^2有界,殆どいたるところで各点収束,の3つから直ちにL^1収束が従うことが分かる訳です.

それで問題を見ると,これはそのL^1収束を示す問題なわけですが,この誘導は一様可積分のかなり典型的な議論をさせるものなので,一様可積分について知っていれば簡単です.

(1)

チェビシェフの不等式です.

    \[r^21_{A_k(r)} \leq |f_k - f|^2\]

の両辺を\muで積分してL^2ノルムの有界性を使えばよいです.
先にFatouの補題からfL^2ノルムもMで抑えられることを出しておきましょう.

(2)

測度有限で\Omega \setminus  A_k(r)上では|f_k -  f|rで抑えられるので,
優関数として定数関数rが取れます.あとはルベーグの収束定理.

(3)

(2)からA_k(r)の外では収束することは既に分かっています.
ではA_k(r)上の積分をどうするか?Holderの不等式を使います.

    \[\int_{A_k(r)} |f_k - f|d\mu \leq \left( \int_{A_k(r)} |f_k - f|^2d\mu\right) }^{1/2}  \mu(A_k(r)) ^{1/2}\]

(1)からkによらず,\mu(A_k(r))\frac{C}{r^2}で抑えられることはわかっているので,結局,

    \[\int_{A_k(r)} |f_k - f|d\mu \leq M^{1/2}\frac{C^{1/2}}{r}\]

を得ます.よって任意のr >0に対し,

    \[\limsup_{n \to \infty} \int_{\Omega} |f_k - f|d\mu \leq M^{1/2}\frac{C^{1/2}}{r}\]

が言えるので,r>0は任意より,証明できました.

6

局所凸空間の理論で出てくる,ミンコフスキー汎関数についての問題です.
ただこの問題におけるKは凸とは限らないので厳密には少し違いますが.
そこら辺の話を知っている必要は全くないありませんが,
ミンコフスキー汎関数がある種の距離のようなもの(セミノルム)として働くことを知っていると解きやすいとは思います.

(1)

簡単なので省略.

(2)

これも簡単ですが一応大まかに解答を書いておきます.
Kは開なので,xを中心とするある開球で,Kに含まれるものがとれます.
そうすると原点からx方向に直線を引いたときにxより少し先に行った点も
Kに含まれます.その点はsx \  (s>1)と書けるので,pの定義から,p(x) < 1/s.

(3)

汎関数q(x)を次のように定めます.

    \[q(x) = \inf \{ \alpha > 0 | x/ \alpha \in B_r\}\]

ここでB_rは原点中心,半径rの閉球です.r>0は問題文にあるようにB_r \subset Kとなるようにとっているものとします.

こう定めると集合の包含関係からp(x) \leq q(x)が成り立つことがわかります.
またq(x)の定義を見て少し考えれば,

    \[q(x) = \frac{||x||}{r}\]

が分かります.

7

複素関数論の問題です.あまり得意ではないのでもっときれいな解答があるかもしれません.
あと(4)は分かっていないので解答は無しです.

(1)

コーシー・リーマンの関係式と正則性から無限回微分可能性が従うことからわかります.

(2)

Greenの公式から従います.

(3)

(2)から,曲線の取り方に寄らないことが分かるので,積分路を,
・0からxを結ぶ直線
xからx + yiを結ぶ直線
の2つをつなげたものにとり,それを偏微分すればわかります.

(4)

省略.

twitterで犯罪予測

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twitterで犯罪予測というと,犯罪予告を見つけたり,言動から犯罪者予備軍を発見する.

こういうのをイメージするかもしれません.しかし少し考えると,わざわざtwitterで犯罪予告をしたり,犯罪をほのめかす人なんて犯罪者のうちのほんの一部で,予測出来たところで効果が薄そうです.

今回紹介する犯罪予測の方法はこのようなものではありません.


バージニア大学のMatthew Gerber氏はある方法でtweetを分析し,それを従来の方法と組み合わせることで,25種類の犯罪タイプを調査したうち19種類について精度を改善することに成功しました.

ここでは,その手法を紹介します.

Matthew Gerber氏の方法

twitterの設定によってはtweetに位置情報が含まれることは多くの人が知っていると思います.また,tweetにはつぶやいた時刻が記録されます.つまり,位置情報付きのtweetを調べることでtweetがどの場所,どの時点に集中しているのかの情報が得られます.

さらに,tweetの内容をトピックモデリングという手法を使うことで,適切な粒度に分類することができます.

Matthew Gerber氏はこの位置・時間・トピックの情報と実際の犯罪データを比較し,これらの情報と犯罪のタイプには相関関係があることを発見したのです.

コメント

個別のtweetに着目するのではなく,tweetの時空間的な分布や話題から犯罪の起こりやすさを測るというアプローチは面白いですね.確かにtweetの集中している場所は人も多そうで犯罪が起こりそうな気はしますが,トピックと犯罪タイプの相関まで得られるというのは驚きです.

リンク

Predicting crime using Twitter and kernel density estimation – ScienceDirect

紹介した論文です.

 

ケプラー予想がついに完全解決

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300年以上の歴史を持つ未解決問題であったケプラー予想がついに完全解決したようです.
この記事ではケプラー予想がどのような問題であるかの説明と解決までの歴史をまとめています.

ケプラー予想とは

ケプラー予想とは「3次元空間の中に同じ大きさの球を充填するときに最も密度が大きくなるような並べ方は六方最密充填である」という予想です.

六方最密充填と急に言われてもピンとこないかもしれませんが,別に複雑なものではありません.
次の図のような詰め方です.

つまり,球を3個くっつけて置いて,その上にできたくぼみに球を置いていくという詰め方です.
高校の化学の結晶構造の話で出てくるので覚えている人も多いかもしれません.

六方最密充填は確かに隙間が少ない詰め方のように見えますが,これよりもうまく詰めるのが無理かと言われるとなんとも言えない気分になりませんか.


これは素人だから分からないというようなものでは無く,数学者にとっても非常に難しいものでした.ケプラー予想の内容自体は単純で,数学の知識が無くても理解できます.
しかし,正しいと証明されるには300年以上もかかったのです.

ちなみに,このケプラー予想のケプラーとは,天体の運動に関するケプラーの法則等で知られているあの有名なヨハネス・ケプラーのことです.ケプラーが1611年の論文『六角の雪片について』でこの予想を提示したことに由来しています.

数年前に既に解かれている?

この記事のタイトルに「完全解決」と書きましたが,人によっては「ケプラー予想は何年か前にすでに解かれていたはず」と思う人もいるかもしれません.

実際,「ケプラー予想」とgoogleで検索をかけると次の記事がすぐに出てきます.

400年の難問、「ケプラー予想の証明」やっと100%終わる | ギズモード・ジャパン

これは2014年の記事です.他にも1998年に解決というようなものも見つけられます.これらはどれも嘘を言っているわけでは無く,それぞれ違う事柄を「解決」と表現しているのです.

以下では,この様々な「解決」を整理しながらケプラー予想の歴史を見ていきます.

1998年 第1の解決

1998年に,当時ミシガン大学に在籍していたThomas Halesとその学生であるSamuel Fergusonがケプラー予想の解決を宣言します.これが最初の「解決」です.

ただ,当たり前のことですが本人が「できた」というだけでは本当に解決したかはわかりません.
権威ある雑誌の査読をクリアし,出版されて初めて万人の認めうる解決といえるでしょう.

しかし,このときにはこの「査読」が問題になったのです.何故なら彼らの方法は,六方最密充填よりも密度が高くなるかもしれない充填法を現実的な数まで絞り込み,あとは片っ端から計算機を用いて調べるというものだったからです.「現実的な数」と言いましたが人間の手では到底不可能な量です.
当然論文には膨大な長さのプログラムが記されています.

雑誌の方としては正しいとすれば偉大な結果なわけですから是非掲載したいと思う訳ですが,このプログラム部分の査読は非常に難航し,査読チームが結成され精力的に検討されたようですが,結局は完了しませんでした.

しかし,査読者が読む限りでは「本質的にこのアプローチはすべての場合で上手くいっている」と強く感じさせるものであったようで,査読が完全では無いものの最終的に論文は出版されることとなりました.2006年の事です.

2014年 第2の解決

2003年に上記の論文の執筆者の1人であるThomas Halesは”Flyspeck”なるプロジェクトの開始を宣言します.

このプロジェクトはケプラー予想の証明を計算機で検証可能な形式的証明に書き換えるというものです.計算機による証明検証は非常に信頼性の高いものなので確かにこれが実現すればこの証明の信頼性はグンと上がることになります.

当然,膨大な作業量が必要となる訳ですが,無事にこの作業は完遂され,2014年にプロジェクトの完了が宣言されました.これをもって「解決」と報じている記事が多いようです.

2017年 第3の解決

2017年5月に Cambridge University Pressの”Forum of Mathematics, Pi”にThomas Halesらによる論文A FORMAL PROOF OF THE KEPLER CONJECTURE“が掲載されています.この雑誌はオープンアクセスなので無料でWeb上から見られます.

この論文は学術誌に掲載するというオフィシャルな形で”Flyspeck”の完了を報告をするのを目的としたもので,特に技術的な詳細が書かれているわけでは無いのですが,形式証明の完了に至るまでの道筋が簡略にまとめられています.そういう意味で本質的には2014年で解決済みともいえるのですが,オフィシャルな発表という意味でこれも「解決」といってよいと思っています.

リンク

A FORMAL PROOF OF THE KEPLER CONJECTURE | Forum of Mathematics, Pi | Cambridge Core

文章中で言及した論文です.文中の査読者のコメントはこの論文のイントロから引用しました.